多文化社会の減災 〜外国人にも安全に暮らせる社会を目指して〜

名古屋国際中学校・高等学校

活動に参加した児童生徒数/中1~高3学年770人
活動に携わった教員数/15人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/10人

実践期間2015年5月1日~2016年3月1日

活動のねらい

愛知県の外国人居住者は、全国3位の多さです。そうした環境において、災害が起きた時に外国人が日本人と同じような避難ができるかという社会的問題があります。そうした必要性から本校では、災害に対する正しい知識と避難に関する情報、減災に関する手段を多文化共生社会においていかに広めていくかを生徒主体で考え、地域社会と関わっていくことを目的としました。
生徒たちは、名古屋市昭和区を中心に、災害や防災・減災の基本的な知識や体験を外部有識者から講話を受け、その講話から社会課題を見つけ、減災マップや減災グッズの作成、調査分析、外国人への減災対策などの具体的取組を行いました。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
【1】総合的な学習の時間での取組み
 全校で総合的な学習の時間に、「学校帰りに、コンビニ内でマグニチュード7の南海トラフ巨大地震に遭遇!あなたは何をしますか?」というタイトルのワークシートを用いた基礎学習を行い、各クラスでグループディスカッションにおいて、被災した際の判断の重要性や難しさについて考えました。
【2】避難訓練での新たな取組み[
 9月1日の防災訓練に合わせてあいちシェイクアウト訓練に参加ました。この訓練は、正午の時報を合図に1分間、地震から身を守る安全行動1−2−3を愛知県内一斉に実施する企画です。[まず低く]→[頭を守り]→[動かない]の一連の動作を、愛知県内の公的機関や学校、企業など多くの人たちと心を1つに行いました。本校では、グローバルな視点を重視するため、3つの動作を英語表記で[DROP]→[COVER]→[HOLD ON]にしました。
【3】被災地域の課題の把握
 東日本大震災において被災し、復興に携わっている方や災害派遣で震災の現場で活躍された陸上自衛隊の方々に来校いただき、震災時の体験や救助に関わる現場の様子などについて講話していただきました。被災者の思いを知ったり、自衛隊の特殊車両の乗車体験を通して、生徒達は「もし愛知で災害が発生したら何ができるだろう?」という事について、真剣に考えているようでした。
【4】国内外での”多文化共生と減災フィールドワーク”
 本校が行っている語学研修での訪問先(ロンドン・シンガポールなど)において、防災・減災に関する外国人の視点や考え方についてアンケート調査を実施し、日本での防災・減災との比較検討を行いました。町の人々、お店の人々など、国内外の様々な地域や職種・年齢の外国人に対して、経済活動と貧困に関わる以下のような質問を行いました。生徒たちは四苦八苦しながらも、英語でコミュニケーションを試みました。
[質問事例] Have you ever participated in a disaster drill before? If yes, what kind of drill was it?
     (防災訓練をやったことはありますか?)
 夏休みには、生徒達は自宅周辺の避難場所や避難所を調べ、自宅までのルートを減災マップにまとめました。また、そのルートにある危険 個所についても調べ、想定される災害を予測しレポートを 作成しました。このフィールドワークを通して、災害時に学校や自宅にいた場合に、「どこに」・「どのように」避難しなければならないのかについて学習しました。
【5】昭和消防署と連携した救命講習
 地元の昭和消防署の方々から、AED講習や人工呼吸法、救急時の対応法などを学びました。救命処置の正しい知識を習得することはもちろん、外国人の方でも救命できるよう、英語で救命時のコミュニケーションが取れる国際生を目指します。
【6】多言語減災グッズ及び減災マップの作成と普及
 安全な時に見落としがちになってしまう「トイレ」ですが、被災者の体験談から被災地で必要な物資である「トイレ」問題を取り上げて、外国人被災者へ支援も含めた、誰でも使える携帯用トイレの普及を目指してオリジナル携帯トイレの制作に取組みました。パッケージデザインを考え、「(株)まいにち」さんの協力のもと、携帯トイレを製品化して、生徒達自身で外国人が多い公共場での配布を実施しました。パッケージを多言語(英語・中国語・韓国語)での表記にするために、本校の外国人教員や留学生等の意見も取り入れつつ、中学生・高校生らしい携帯トイレや減災マップを作成しました。
 【7】社会的活動の実践
 2015年4月に発生したネパール大地震と9月の関東東北豪雨の支援のための募金活動を校門前や最寄り駅で実施しました。まず「自分たちで何ができるのか」について生徒間でディスカッションし、名古屋NGOセンターと協力・連携して、募金活動を行いました。現地の被害状況を知ってもらう工夫を行い、多くの方々に募金に協力してもらいました。

2)9月研修会での学びから自校の実践に活かしたこと、研修会を受けての自校の活動の変更・改善点、
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点、助成金の活用で可能になったことなど。
東北での研修会において、被災した経験のある児童生徒の主体的な取組みを視察しました。そこで、本校での取組みにおいても、特別講師による講話などの座学だけでなく生徒が地域の人や外国人と積極的に関わる取組みの実践を試みました。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
これまで、一過性の取組みが多かった本校の減災教育活動の体制を見直し、総合的な学習の時間・教科教育・学校行事などにおける生徒の学習内容を体系化し、クロスカリキュラムにおいてより効果的な実践をすることができました。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
防災・減災に関する知識や体験を踏まえて、地域における課題の発見やその解決の創造を子ども達自身が積極的に考える姿勢を養うことができるとともに、外国人の多く住む多文化共生地域において防災・減災に関する取組へ発展させる事ができました。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
これまで限られた教員が防災教育担当として活動していましたが、全校で総合的な学習の時間における減災教育の取組みを実践するために、各教員が減災に関する知識・教養を身につける必然性が高まり、教員一人ひとりの意識が変化しつつあります。また、これまで地域の方々や消防署との関わりが薄かったですが、減災教育活動を通して、これまでより多く地域と関わる機会が増えました。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
今年度は全校をあげて精力的に減災教育活動に取組みましたが、教員の教材などを準備する時間の確保や学校全体の取組みの周知の徹底が課題としてあがりました。今後は、減災教育活動の継続性をどのように維持していくか、新たな体制作りとアイデアが求められています。

 

活動内容写真

活動において工夫した点

学習活動では、アクティブラーニングを積極的に活用し、基礎学習→グループワーク→フィールドワーク→外部連携を通して、校内や地域・国際社会での実践に繋げる試みを行いました。また、本校にはAEDが3台設置されており、生徒や教員は学校や消防署において救命講習を受講し、自ら非常時に備えています。現在、救命講習受講者数は約110名に達しています。

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