三河地震を調べ、その経験を防災に生かす総合的な学習の時間

安城市立明和小学校

活動に参加した児童生徒数/5学年62人
活動に携わった教員数/2人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/200人

実践期間2020年6月3日~2021年3月24日

活動のねらい

本校学区は、安城市の南端に位置し、昭和20年(1945年)には、震度7を記録する三河地震があり、この地域を含む旧明治村は、325人の死者と多くの家屋が全壊、半壊をする被害があった。それから75年たち、この地震を経験した住民も少なく、この地震があったこと自体を知る人も少ないのが現状である。一方今後起こるであろう南海トラフ地震では、本地域も大きな被害を受けるだろうと言われている。
 本地域は、昔ながらの景観が残るとともに3世代以上同居も少なくない。このような地域で、過去に起こった三河地震を探るとともに、南海トラフ地震をはじめとする地震への防災を児童が学ぶことで、家庭や地域へより防災意識を高めることができると考えた。また児童自身が、将来にわたって防災意識を持ち続けるとともに地域に積極にかかわり、いざというときに大きな力となるようにしたいと取り組んだ。
・地域の一員としての自覚をもち、災害時に自ら安全な行動ができる。
・状況に応じて、主体的に判断し、自他の命を守ることができる。
→過去の地域の災害に主体的にかかわり、それを教訓に、これから起こるであろう地震に対して、的確な行動がとれるようにする。
→地域住民の一員として進んで地域に関わっていこうとする。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
1 三河地震とは、どのような地震だったのだろう。6月~8月
・歴史家の話 ・本校に残る「震災記録」を読む
・三河地震についてのアンケート(学区)
・体験者の話を聞く ・三河地震新聞の作成
2 南海トラフ地震とは、どのような地震だろう。9月
・ハザードマップ  ・学区に予想される被害の把握
3 地震に備えて、どのようなことができるだろう。9月~1月
・保護者への防災意識に関するアンケート→集計
・防災倉庫、備蓄品の確認
・防災体験(避難所体験) マンホールトイレの設置、マイトイレ
・非常食のアレンジ、試食
・我が家での防災対策 持ち出し・防災バッグの中身
・快適な避難所生活を考える(過去の震災から学ぶ)→自分たちにできることを考える
4 東日本大震災から学ぼう
・東日本大震災とは、どのような地震だったのか。
・絵本や動画を見て、東日本大震災の事実からいかせることはないか、考えよう。
5 学んだことを家族や地域に伝えよう。2月~3月
・「防災発表会」の開催→緊急事態宣言発令に伴い中止→防災報告書の作成→家庭・地域へ
・リーフレットの作成・回覧板の活用→地域へ発信


3)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
・前半の学習は、三河地震について調べ、知ること、そしてそこから学んだことを生かすことを中心に行った。資料や映像だけでなく直接話を聞くことができ、児童にとって興味関心を高めた。(助成金の活用)
・後半の学習では、特に2つのことについて、考えさせる授業を行った。
(自助)自分の命をいかに守るか。
・緊急地震速報の意味を知り、非常時に持ち出すものを考え、非常食を実際に試食するなどの学習を通して、自分の命をいかに守るか、考えることができた。(助成金の活用)
(共助)避難所生活を快適にするにはどうすればいいか。
・何が必要か、どう行動するか、自分に何ができるか。
 東日本大震災や熊本地震など、避難所が開設された写真や動画、新聞記事や本などから考え、自分なりの考えをもつことができた。
 研修や報告会で紹介された「気仙沼市東日本大震災震災遺構・伝承館」「大牟田市立みなと小学校」「階上中学校の答辞」「鹿折中学校」などをiPadを使って調べた。
・助成金を活用して、学習のまとめ、防災ガイドブックを作り、保護者や地域に配布。地域が少しでも防災に関心をもってもらおうと取り組むことができた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・自分たちの地域で起こったのに、父母でさえ知らない三河地震を調べる活動を切り口に、防災について学習を進めたことで、児童の意欲を高めることができた。
・三河地震について、地域住民のアンケート回答を集計したり、証言の映像を見たり、体験者の話を聞いたりすることで、自分たちの地域の防災に対する課題を見つけることができた。
・様々な体験をすることで、いざというときに、自分から行動できるように取り組んだ。いざというときに役立ちそうと考えることができたとともに、自分だけでなく、家族や地域にも知ってほしい、広めたいと考える児童の姿を見ることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・災害の映像を見る場や専門的な知識や経験のあるゲストティーチャーと直接かかわる場などの体験活動を行ったことで、地震そのものの被害の怖さだけではなく、避難生活の大変さに気付くなど、さまざまな視点を得ることで、防災意識が高まった。さまざまな体験活動を実施し、避難所生活の大変さや少しでも快適に過ごすための工夫に気付き、自分たちにできることは何かについて視点を広げて考えることができた。児童は、体験活動を通して自分たちに必要なものは自分で備蓄をしておかなければならないと、自助の大切さに戻って考えることができた。そして地域に意識を向け、地域の問題点に気付き、地域の一員として地域に協力したいという共助の思いをもつことができた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・地元にあるダンボール製造工場が、避難所になった際のベッドやパーテーションを作っていることを知り、学校に招いて、その実演をお願いした。たくさんの材料を用意していただき、子どもたちが自分たちでダンボールベッドやパーテーションを組み立てていくことができた。企業にとっても初めてのことだったが、貴重な経験となったという声をいただいた。
・学区にある町内会では、今年度は新型コロナ感染症予防のため、これまでのような防災訓練を行うことができなかった。児童が地域で起こった過去の震災を調べ、これから起こるであろう震災やその防災について学習していることを地域の人に知らせるために、教師が防災訓練に参加し、活動の様子を報告する機会を得た。児童が作った新聞や資料を配布して、説明した。「子どもたちがこんなに調べていることに感動した。町内会ももっと防災に対して取り組んでいかないといけない」という声を聞いた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・今年度は発表会が中止となり、地域に発信する場ができなくなったのは残念であった。最後に発信するのではなく、継続的に発信する機会を設けて、地域に主体的に関わり、地域の一員として適切な判断や行動ができるような工夫をしていきたいと考える。

 

 

活動内容写真

  • 震災記録を読む

  • ハザードマップを調べる

  • パーテーションを組み立てる

  • マンホールトイレを設置する

活動において工夫した点

・昭和20年「三河地震の震災記録」を読む
 学校に残された震災記録の実物を提示、印刷して児童が実際に読む。戦時下で記録が少ない中、貴重な資料に、被害の様子、死者の数、学校や職員の対応などを見ることができ、三河地震や自分たちの地域の災害への興味・関心を高めることができた。
・地域の協力
 三河地震については、体験した人の高齢化に伴い、生の声を聞くことが難しくなってきている。町内会に相談したところ、回覧板を使ってアンケートを取ったり、話ができそうな人を探してもらったりすることができた。直接体験した人や、その人から聞いたことなど、いくつかの情報を得ることができた。

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