地域とともに歩む防災活動

岡崎市立常磐東小学校

活動に参加した児童生徒数/1~6学年48人
活動に携わった教員数/12人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/100人

実践期間2015年4月6日~2016年3月10日

活動のねらい

・災害を未然に防いだり、災害の被害を最小限にしたりするために、学校や家庭生活・登下校・地域等において、児童が危険を速やかに発見し、自らの身の安全を確保できるようにする。
・児童が、地域の方々と協力し、通学路や地域の危険箇所や避難場所などを書き込んだ防災マップを作成して、学校や地域で発表して防災意識の高揚を図る。
・学校が、家庭や地域、関係諸機関(大学・NPO法人・市や県の防災課等)と連携して、より充実した防災活動を展開する。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①本年度の防災活動の目標を立てる(何ができるか、何をしたらよいか)
・地域にアンケートを実施して、昨年度の活動の反省などを踏まえて活動の目標を立てる。
②昨年度制作した防災マップを改良するため、地域の方々と協力して「まちあるき」を計画・実践する。
③地域で実施したアンケートを分析し、学校・地域・関係機関で組織した防災会議で今後の活動を決定する。
④防災マップの改良、具体的な活動、実践の報告(学校・地域・保護者を対象にして)、次年度への課題の確認

2)研修会から自校の実践に活かしたことと
東北の小中学校を訪問し、児童生徒が中心となって活躍していた。本校でも、児童が中心となって、学校での避難訓練や通学時の避難訓練を実施した。また、日本赤十字社の方々を講師に招聘して、児童・教職員・保護者の講習会の開催をした。助成金の活用で可能になったこととして、地域の防災危険箇所に、児童のオリジナル防災看板を作り設置することが可能となった。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
○下級生に情報が引き継がれ、学校の継続的な防災教育に発展すること
昨年度の6年生の後輩に対する願いを受けて、新6年生が活動の中心となった。6年生が、「子供避難訓練」を企画し、全校の下級生をグランドまで避難誘導を行うという新たな試みを実施した。また、一昨年に卒業生が作った防災看板を改良して、より耐久性の高い新看板の製作をした。その際に、デザインを決める「防キャラグランプリ」を開催し、全校児童・保護者・地域の方にも投票していただき防災への関心も高まった。後輩にも同様の防災活動を引き継いでもらうことを強く希望している。そのために、今年3月、これまでの防災活動についての報告会を後輩や地域の方を対象に企画しており、今年度のまとめとともに、来年度に向けた課題や活動案なども現在考えられている。
○活動による防災意識の変化を調査し、今後の活動のステップアップに生かすこと
6年生児童が、6月に学区全戸の350世帯にアンケートを実施し、約8割の方から回答を得た。その結果防災に関する備えとして94%の方が防災の備えているとの回答をいただき、意識としては高まりつつあると実感した。また、見守り隊「大葉の会」の発足、地域のAED講習会の実施などからも活動がステップアップしている様子が伝わってきた。これも地域役員の方をはじめ、多くの方が協力していただいたからだと思う。
○学校や通学路だけでなく、さらに地域に広げていく活動
今年は通学路だけでなく広い地域にも足を運んで危険地区の調査をした。そこで分かったことは、学区において青木川沿いの県道が唯一の幹線道路であり、適切な迂回路はないことである。孤立してしまった場合を考えて、防災倉庫の点検、家庭での備蓄状況の調査、昨年度設置された「公衆電話」を使った安否連絡訓練などを、子供たちの目線で活動を実施することができた。

児童生徒が、何を学び(変容)・どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか
本校は全校児童48名の小規模校である。したがって、多くの友達との関わりが少なく、素直な反面、自分に自信がもてなく、意欲的に周囲の人に話しかけたりするのが苦手である。また、指示されなければ自主的・積極的な活動があまりできない傾向にある。その中でも今回は、8名の6年生の児童が中心である。
昨年度の卒業生の願いを受けて、自分たちの活動を「防災Jr.レンジャー・セカンド~地域と共に~」と名付け、学校や登下校での避難活動を自分たちでやり遂げたいという思いが高まり、我が校で初めて実施した。その他、1年間にわたり、地域の方々や愛知工業大学の先生や学生の皆さん、NPO法人ドゥーチューブ等関係諸機関、日本赤十字社の方々など、多くの方々といっしょに活動した。その結果、防災アンケートを実施したり、学区に「防災看板」を作製したり、防災マップをよりよいものに改良したりするなかで、学校や地域の防災リーダーとして取り組んでいくんだという自覚が育ってきた。さらに、今後も後輩に、防災活動を継続・発展してもらうことを強く望んでいる。そのために、今までの自分たちの活動や今後の願いを後輩や地域の人に伝えるための発表会を3月初旬に予定している。以上のことから、6年生の児童は、防災活動を通して周囲の人のために尽くす行動によって、自己に自信が持てるようになり、自尊感情・自己存在感が高まってきたと思われる。また、それにより、自主的・意欲的な態度や言動が見られるようになってきた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
子供たちは、学校や地域の防災のために本当によく努力した。看板を頼まれた業者からも、「人数は少ないが、子供たちの熱心な気持ちがしっかり伝わってきた。」と感激されていた。
平成27年6月に子供たちが学区の全世帯を対象に防災アンケートを実施した。その中の「感想・意見」の欄の多くが子供たちの防災活動で、防災意識を高揚したことが書かれていた。その一部を照会する。
・子供たちもよく調べて努力しているので、私たち地域も一体となって真剣に防災に取り組みたい。
・家族全員で防災マップを見ながら、この際一度安全な避難場所などについて話す機会としたい。
・子供たちの調査でどこが危険な場所か、どこに避難すればよいかなど地図を見て分かってよかった。
・子供たちの真剣な取り組みに感激しました。よく調査しており、備えの必要性をとても感じました。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
①防災教育を継続し、6年生だけでなく児童の発達段階に応じて年間計画の中で防災を実践していきたい。
②防災マップをさらに継続的に改良を加えて、独居老人、高齢者を中心に考えた昼間の対応についても考えたい。
③地域の防災意識の高揚をさらに図り、あらゆることを想定した学区の防災も地域の方とともに協力したい。
④児童が中心となって、各町で学区全員を対象とした心肺蘇生法講習会等も実施したい。

5)その他
①具体的な実践は、別紙資料「地域とともに歩む防災活動―中山間地における小規模校を事例としてー」を参照。
②学区防災マップは、「岡崎市立常磐東小学校ホームページ」の左下添付の「防災マップ」を参照。

活動内容写真

活動において工夫した点

○本校の研究「かかわり合い学習」を推進し、児童に自己解決力を育成していること
児童数が少ない学校にとって、防災学習を通して、子供が多くの方とのかかわり合いの中で、自己存在感・達成感・コミュニケーション能力などを身につけることができた。
○学校が中核となり、ネットワークを広げ、学校・地域・関係諸団体(市防災課・大学・NPO法人・日本赤十字・アクサユネスコ減災教育プログラム)で取り組んでいること
本校学区は、愛知県から土砂災害警戒区域に指定されている。地震や豪雨などの場合、がけ崩れや土石流で重大な被害が出る可能性がある。さらに、学区を流れる青木川の洪水の心配もあり、周辺地域から孤立する危険性もある。過疎化が進み、お年寄りが多く、避難が容易にできないなど、問題が山積している。学区総代や社教委員長は心配を募らせており、学校の防災教育に関してとても協力的である。

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