総合的な学習(探究)における防災教育の推進及び避難訓練の改善

広島県立廿日市高等学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年841人
活動に携わった教員数/58人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/14人

実践期間2019年4月1日~2020年3月31日

活動のねらい

・総合的な学習(探究)の時間においては,横断的・総合的な学習や探究的な活動を通し,課題発見・課題解決に向けて主体的,創造的,協同的に取り組む資質・能力及び態度を育てる。また,学び方やものの考え方を身に付け,課題解決のための探究的な活動と自己の在り方生き方を関連させて取り組むことができるようにする。1年生は地域の課題を設定し2年生はSDGsと関連付けて課題を設定する。その中で防災教育については減災・防災活動に対する意識を高め,地域の防災力を向上させるための課題解決に取り組む。その教育活動の成果を行政,地域関係者を招いた場で行政への提言を行う。
・避難訓練
人命を尊重し,災害時の被害を最小限にとどめることを目的とする。震源地が近く,津波到達までに時間的余裕がないことを想定し,予め定めたマニュアルに基づき緊急避難として校舎の最上階に避難する。点呼・指揮等の訓練を行い,指示・命令系統の課題を発見し,改善する。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①総合的な学習(探究)の時間についての実践内容は,(ア)課題を自分ごとにする,(イ)課題発見・解決学習の過程を学ぶ,(ウ)その過程を実践してみる という柱に沿って次の計画表のどおりに進められている。(図1)


②避難訓練 11月6日(水) 15:20~16:10 実施
・緊急地震速報の情報確認 → 校内非常伝達①(非常放送で教頭が行う)→ 大津波警報発令の情報確認 → 防災本部設置(1号棟3階図書室)→ 校内非常伝達②(非常放送で教頭が行う)→ 生徒は各避難場所に集合。教職員は本部に集合,避難方針を確認する。→ 正担任は各避難場所に行き,点呼・安全確認及び指示 → 学年主任は本部で待機し,正担任からの報告を受ける。→ 学年主任は本部(教頭)に報告する。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  
昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①2年生の総合的な学習の時間については今年度よりSDGsの視点を取り入れて課題設定をした。SDGsの考え方を学ぶことにより,テーマ設定が多様化,具体化し課題解決に向けてより「自分ごと」としてとらえたアプローチができるようになった。1年生も次年度の探究活動につなげるために2月にSDGsワークショップを開き,カードゲームを行った。

②避難訓練については,津波による避難訓練のみを行った昨年度の反省を踏まえ,今年度は地震発生時の行動訓練の後に津波による避難訓練を行った。本校は敷地が広く,定時制を併設している,そのため非常災害時には確実で迅速な情報伝達が求められ,特に携帯電話等不通時の連絡手段や方法を検討しておくことは必須である。今後は助成金で購入したトランシーバを活用した連絡体制の構築を進める。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
避難訓練については,地震発生により机の下に入り身を守るという動作が入り,生徒はより集中して避難訓練に取り組んだ。来年度は大地震により想定される被害について考えさせて行動を取らせるなどの改善が考えられる。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
総合的な学習(探究)における防災をテーマにした課題解決学習においては,「ただ,指定されたところに逃げればよい」という行動をとるのではなく,自分たちが地域の防災の問題点に気づき,解決方法を考え,自ら行動に起こして,地域の人や外国人,避難者に働きかけなければいけない存在になることが求められていることがわかったと記した生徒もいる。
SDGsワークショップでは経済・環境・社会すべての分野が連鎖しているということを、カードゲームを通して学んだ。最初は経済活動を重視して自分のグループがお金を貯めることだけを目標にしていたが,徐々に全体の活動を見通して社会に還元できるカードの使い方をグループ同士で話し合いカードを交換できるようになった。(図2,図3) 3学期の生徒の個人レポートでは,水害からの避難についてのレポートを一例にあげると,自らマンホールや側溝の場所を調べ,マップを作り,効果的な発信方法や地域との連携を求める提言をしている。防災・減災の観点から活動を通して課題を解決し発見する力を身に付けている。(図4)

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
総合的な学習(探究)の時間は12月18日(水)にポスターセッションを行い,廿日市市役所,広島県職員,学校運営協議委員が参観した。調査内容については,インターネット等で調べるだけでなく,アンケート,現地調査なども取り入れている。その結果を踏まえた考察を経て結論を導いているため,課題設定から解決までの構成がわかりやすく,視点のレベルの高さ,発表の巧みさについて好評価を得た。各グループのポスター発表の後,ふせんを活用して見学者から質問,評価をさせているが,より深い学びとなるように,質問力を高め,対話の場面が設定できるとよい,という助言をいただいた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
総合的な学習(探究)の時間については防災教育の分野に限らず,単年度で終わらせるには惜しい調査研究活動である。1・2年合同のポスターセッションを活かして,次年度の2年は今年度の調査研究を継続していくようなスタイルが構築できるとよい。

活動内容写真

  • 図2 SDGsワークショップ

  • 図3 SDGsワークショップ

  • 図4 生徒の個人レポート

活動において工夫した点

総合的な学習(探究)の時間のポスターセッションについては,「自分の考えを論理的に表現する力」,及び「社会をよりよくしていこうとする態度」について5段階の自己評価をさせる。昨年度は2月にポスターセッションを行い,自己評価を記入して終わっていたが,今年度は個人レポートを作成させた。その活動内容は上述の通り,9月に階上中学校で受けた研修と方向性が同じであるといえる。

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