withコロナで取り組む 板橋の減災に被災地の体験をどう生かすか?

東京都板橋区立板橋第三中学校

活動に参加した児童生徒数/1学年144人
活動に携わった教員数/8人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/約50人

実践期間2021年5月から2022年1月14日

活動のねらい

被災地から得た教訓を基に、首都直下型地震や集中豪雨などの災害に対する減災・防災対策を考える。考えたことを学校内外、特に地域住民へ伝えることで自分の命を守り、他者の命を助ける行動ができるようになる。それにより、地域との関係が希薄になりがちな都市部において自助・共助を機能させ「誰も取り残さない」減災対策を目指す。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
 5~7月命の大切さ・多様性 9~12月災害の脅威と減災の知識・技能、地域との関わり
5.31 【理解】絵本@meet 9.6 【知識】水害・地震 11.20 【体験】地域防災訓練
6.5 【体験】国@体育館 9.13 【体験】妊婦・高齢者 11.22 【対話】共助・協働
6.15 【理解】絵本@教室 9.27 【講話】永田氏 11.25 【講話】荻生氏
6.19 【体験】点字@meet 10.4 【対話】自助・共助 11.29 【対話】テーマ
6.21 【体験】命@体育館 10.11 【体験】防災キャラバン 12.2 【表現】13歳の主張
スピーチ原稿作成
学級内発表→代表者
(国:構成)
6.28 【興味】新聞@form →formsテーマ入力・グループ分け 12.6
7.5 【体験】視覚@体 11.1 【探究】グループ
地域防災訓練に向けて
(国:情報を伝える)
リーフレット作成等
12.9
7.12 【体験】盲導犬@体 11.4 12.13
7.19 【理解】新聞@教室 11.8 12.16 【表現】学年発表
11.11 12.20 振り返り
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①地域や関係機関との連携・協働を強化し、減災対策を考える際に地域住民の方にインタビューを行うことや減災対策を地域住民の方に伝える活動を取り入れたこと。 ②災害弱者(障害者・高齢者・幼児・妊婦等)への配慮を教化するため、肢体不自由、視覚障がい、聴覚障がいのある方や高齢者、妊婦や乳幼児がいる保護者にインタビューを行うことや減災対策を伝える活動を取り入れたこと。

3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
これまでは、地域の方主導で行われていた年一回の地域防災訓練において、生徒が発案した活動を取り入れたり、生徒が調べ、考えた減災対策を伝える活動を組み込んだこと。また、計画的・継続的な減災学習を行うことで、体験から考え、調べ、学びを深めることができたこと。特に、阪神淡路大震災を体験した方や東日本大震災の復興支援に携わった方々の話を聞いたあとに、気付いたり考えたりしたことを話合いながら、身近な地域の減災対策に活かすにはどうしたらよいかを考えるなど、被災地の体験を教育活動に活かすことができたこと。

②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
今回の減災学習では、本校の教育活動に基づき以下のような能力・態度を育むことを目指した。
「学ぶ」知識・技能
  a命の大切さb多様性c災害の脅威d減災の知識・技能
「鍛える」思考力・判断力・表現力
  a自分が伝えたいと考える対象に向けて必要な情報を収集、選択し減災対策を伝える。
b地域の方々との対話を通して社会との関わりを考える
「思いやる」学びに向かう人間性
 災害時に「社会的弱者」とみなされる人々が安心安全に避難したり、避難所で生活したりするために行動する態度を身に付ける。

事後に行った自己評価により、すべての能力・態度において8割以上の生徒が肯定的な回答をした。自身の変容としては「障がいのある方や高齢者など、地域に住んでいる方のことを考えるようになった」「減災対策の大切さに気付き、自然と家の中の備えを見直すようになった」等の記述がみられた。また、活動全体を通してグループ活動時に積極的に働きかけたり、減災対策を伝える際に伝わる工夫を行ったりと主体的に考え、行動する姿がみられた。

③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から 教育活動を振り返り、教師間で「なぜ減災学習を行うのか」と減災学習の意義を考えるようになった。その中で、都市部における地域との関わりの大切さや生徒が地域等、学校外の方々と関わって学ぶことの大切さに気付いたという声があがった。生徒のインタビューに応じていただき、まとめた減災対策を聞いてくださった地域の方々からは、中学生が減災について考えること自体がありがたいとの声が多かった。特に、妊婦や乳幼児がいる保護者の方からは避難所での生活が不安だったが、中学生が遊び相手になってくれると聞き安心した。さらに、インタビューをきっかけに家の減災対策を見直したとの声があがった。関係機関の方々からは、弱者に目を向けることやこれまでの被災地の学びを活かし、身近な地域の減災に目を向けることに素直な中学生の姿に学んだとの声をいただいた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
総合的な学習の時間を中心として、各教科の学習内容を教科横断的に学ぶカリキュラムマネジメントの重要性、地域住民を中心とした外部関係者の方々と学習活動の目的を共有し、協働して活動することの重要性を教訓として得た。実施時期の変更や内容の精選を行うことで、より教科の学習内容を活かした探究活動が行えるように工夫していく。

 

活動内容写真

活動において工夫した点

 生徒が「自分ごと」として減災学習に取り組めるように学習活動の流れや内容、方法を工夫した。特に、主に3校の小学校から進学してきた中学一年生という年代から「命の大切さ」や「人の多様性」について体験的に学ぶ機会に時間をかけた。その学びを減災学習につなげたことで、減災学習を行う意義を感じた生徒が多かった。それもあってか、減災対策を伝える相手として、身近な年代よりも高齢者や乳幼児に目を向ける生徒、障がいのある方に目をむける生徒の数が多かった。

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