カラダもココロも,みんなで守る。
~座間高防災ルネサンス みんなのWell-beingを目指した防災文化の創出~

神奈川県立座間高等学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年826人
活動に携わった教員数/60人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/10人

実践期間2021年4月7日~2022年3月25日

活動のねらい

本校では,「いかに生き残るか」という視点から,生徒の自助力の養成を図っているが,生徒の主体的な取り組みが低調で持続発展性に欠ける,という課題を抱えている。そこで,生徒が主体的取り組む自走型の防災教育を本校の新たな文化として定着させるべく,実践的防災訓練の企画・運営等の活動を通じて,主体的,創造的,協働的に課題発見・解決に取り組む態度や資質・能力を養う。
また,本校のこれまでの取組では,「生き残った後,どうするか」という視点を欠いていた。災害は高ストレス事象であり,適切な対応を行わなければ,震災後長期にわたり,人の心に被害を与え続ける災害となる。速やかな学校教育再開と,避難住民のより良い生活のためには,こうした心の災害の減災は重要である。心の減災を含む災害後のWell-beingについての教育を図ることは,災害時に地域住民を受け入れる本校では欠くことの出来ない重要な課題である。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
昨年度発足した防災委員会を中心として,次の2本立てで実施。
①実践的な防災訓練…生徒による実践的防災訓練の企画・運営
課題の抽出,訓練内容の検討,訓練準備を通じて,主体的,創造的に課題発見・課題解決に取り組む態度や資質・能力を養う。訓練に合わせて,共助に関する地域住民参加型のワークショップを実施し,地域交流を図り,地域と協働して課題の解決を図る態度を培う。

4月:課題抽出のための防災訓練 ⇒ 5~10月:訓練目標・訓練手法の決定 ⇒
10~11月:訓練準備・事前教育 ⇒ 12月:防災訓練 ⇒ 1月:課題抽出 ⇒
2~3月:次年度活動計画、防災行動に関する動画の配信準備(市内小中学校宛)

②こころの防災…地域を含めた心理的応急処置(PFA)研修とその成果の展開
生徒・地域の関心が高い取り組みを通じて,地域防災力の向上に資する。
6~8月:災害時の心の問題についての勉強会 ⇒9~12月:心の減災に関する勉強会 ⇒
1月:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(以下、NCNP)による研修会 ⇒
2月:振り返りと成果のまとめ ⇒3月:成果共有

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
 研修会を通じて、単に地域“連携”を行うだけでなく、むしろ学校から積極的に地域“貢献”を行うことで地域防災力の強化につながりうるという視点を得た。そのため、積極的な地域貢献を果たすべく、本校防災訓練のために防災員会が作成した地震・火災時の望ましい防災行動についての動画を市内の全小中学校に配布することとしたが、助成金が無ければ実現しなかった事業である。地域連携の観点で、他校の実践例を参考に、より地域の役に立つワークショップを開催できるよう内容の見直しを行った。また、活動成果を地域に還元できるよう、作成した教育用動画を地域の小中学校に配布する。

3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
防災委員会が中心となり実践的防災訓練の企画・運営を行ったことで、防災委員のみならず、一般生徒の防災意識が大きく向上したのは成果である。また、中心となった防災委員は、防災委員の生徒活動を通して防災意識の向上だけでなく、自分たちで目標を設定し、目標に則した活動を企画・運営することを経験したことで、達成感や自身の成長を実感したり、課題の発見に繋がった。さらに、訓練後2か月程度して実施した地理Aの防災に関する単元の学習で実施した防災知識や災害時の行動を問うテストにおいて、防災委員の得点は他の生徒に比べて高くなった。一般生徒についても昨年度と比べ、得点が高くなっており、防災教育によって、教科学習に良い影響を及ぼした可能性があることも成果といえる。このように、防災教育の実施により、単に防災に関する能力のみならず、教科学習等に良い影響を及ぼす成果があった。これまで、防災教育における教科連携とは、各教科学習の中で防災を扱うというイメージが強く、「各教科→防災」というベクトルが意識されていたように思われる。しかし、今回の実践の成果に基づくと、むしろ「防災→各教科」というベクトルも成立し得ることが発見できたのは一つの成果といえる。
また、Well-beingの視点から防災を取り扱うことで、福祉や看護に興味のある生徒など多様な生徒が自身の将来的な進路と防災とをつなぎ合わせて考える態度が持てたことも成果であった。災害と未来の自分を結び付け、そのうえで、現在の自分の進路や行うべきことを考えるなど、生徒の進路発達にも影響があったと考えている。

②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
主体的,創造的,協働的に課題発見・解決に取り組む態度や資質・能力が向上した。さらに、防災にとどまらず、困難の多いプロジェクトをやり抜くことで、自己効力感の高まりがみられた。生徒の一部には、プログラムへの関りを機に、進路を決定・変更するものもおり、キャリア発達にも影響を及ぼした。
また、防災という現象を、心理を含む多角的な視点からとらえることができた。生徒は来年度も活動を継続する意思を見せており、生徒の主体的防災活動という新たな文化が芽吹きつつある。

③教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
地域・教員からは、「従来、防災といえばもっぱら避難について検討してきたが、避難後について検討する機会となった。」「立場や所属の違いを超えて意見交換することで、自分を振り返る機会となった」「高校生の頑張りに触発され、防災意識が高まった」などの意見が寄せられ、地域連携の強化、防災意識の向上に成果があった。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望 研修の機会を活用して教員が成長し、助成金により環境が整い、果敢に挑戦すれば、生徒は着実に成長することが明らかとなった。次年度以降は、本年度芽吹いた新たな防災文化を根付かせるべく、引き続き活動を継続していきたい。特に、地域との連携については、コロナ禍のため、十分に活動が行えなかった部分もある。次年度は、高まった防災意識を具体的な行動に結びつけられるよう、一層地域との連携を深化させていきたい。そのための具体的方策を、これから生徒と共に検討していく。

活動内容写真

活動において工夫した点

生徒の主体的な訓練の計画・運営、及びNCNPの協力を得たこころの減災活動が特徴である。
防災訓練などのイベントの機会だけでなく、訓練の企画・計画段階から生徒に主体的に活動を行わせることで、年間を通じて継続的に防災教育を行い、防災力を高めるよう工夫した。また、組織的な運営を図るため、防災員会は5つの部署制とし、組織的な運営を図った。また、活動の成果を学校外に発信することで、生徒が評価される機会を設け、かつ成果を地域社会に還元できるよう心掛けた。
プログラムの結果、本校の実践内容が県議会で取り上げられ、また読売新聞社によって記事にされるなど社会的にも有益な実践であると評価されている。

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