「私たちは未来の防災戦士」
~『自助・共助』の学びと『つながり』の大切さを通して~

気仙沼市立階上中学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年117人
活動に携わった教員数/28人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/1026人

実践期間2018年4月1日~2019年3月16日

活動のねらい

総合的な学習の時間における防災学習を通して地震津波災害について学ぶとともに,自分の将来や地域・社会との「つながり」を通して,災害に備え,発生時・後に対応できるように,以下の3つをねらいとして学習を展開している。
・今後も直面する可能性の高い地震津波災害に対して,的確な思考・判断に基づく意志決定や行動選択ができるようにすること。
・災害の発生に伴う危険を理解・予測し,自らの安全を確保するための行動ができるようにするとともに,日常的な備えができるようにすること。
・生徒たちが自助・共助について考え,地域住民の一員として,地域の活動に進んで参加・協力し,貢献しようとすること。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①探究的学習
5/01  階上地区防災教育推進委員会へ代表生徒(3年生2名,2年生2名)が出席し,協力依頼。
7/01  階上地区住民へ東日本大震災時の津波避難意識行動調査の質問紙を配布(7/13回収)
9/20  津波避難意識行動調査の分析結果報告(校内)
     東北大学災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔先生からの講話
     調査分析結果をもとに,部活動毎に課題設定・考察・まとめ(~10/11)
10/11  調査分析結果の考察・まとめの校内発表会
     アドバイザー:東北大学災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔先生
②体験的学習
9/18    学年毎防災学習
              ・1年生:地震・津波のメカニズムについての学習
              ・2年生:救急救命講習,応急処置
              ・3年生:小学校への防災啓発活動(手作り防災カルタ,防災クイズ等),簡易テント作成
              ・代表生徒:アクサ・ユネスコ協会減災教育プログラム(教員研修)での本校防災学習について
                    (3年生6名,2年生1名) の紹介,プログラム参加者との意見交換
11/44  総合防災訓練
              ・午前:各自治会による地区毎避難訓練への参加,調査分析結果の考察・まとめを地域に報告
              ・午後:中学生による避難所初期設営訓練(小学校・地域・高校と連携)
                ※ 避難所初期設営訓練を実践しての反省をもとに,今年度版避難所設営マニュアルを作成した。
③学習の発信
10/08  日本自然災害学会オープンフォーラムへ代表生徒(3年生10名)が参加し,ポスター発表。
             優秀発表賞受賞。
11/16  ユネスコスクール東北大会へ代表生徒(2年生6名)が参加し,ポスター発表。仙台ユネスコ協会賞受賞。
11/25  けせんぬま防災フェスタへ代表生徒(2年生9名)が参加し,ポスター発表・プレゼン発表。
12/01  防災学習発表会(参観日:保護者や地区住民,防災教育推進委員,近隣の高校生や教員が参加)
              ・第1部:学年毎防災学習と地区毎避難訓練について(ポスターセッション)
              ・第2部:東日本大震災時の津波避難意識行動調査の分析結果報告(プレゼン発表)
              ・第3部:調査分析結果の考察・まとめについて(ポスターセッション)
              ・第4部:地区住民等との意見交換
1/22  気仙沼市防災フォーラムへ代表生徒(2年生2名)が参加し,プレゼン発表。
2/15  神戸大学附属中等教育学校の高校生が来校。2年生39名が交流し,意見交換。
2/24  東北被災地語り部フォーラムへ代表生徒(2年生7名)が参加し,プレゼン発表,
            パネルディスカッションに参加。
3/08  気仙沼市立階上小学校を代表生徒(2年生13名)が訪問し,小学1,2年生を対象に地震・津波に関する
     防災啓発活動を実施。
3/10  東日本大震災遺構・伝承館の開館式に代表生徒(2年生15名,1年生4名)が参加し,
             避難所初期設営訓練を実施。
3/16    宮城県気仙沼高等学校の総合学習発表会へ代表生徒(2年生11名)が参加し,ポスター発表。
            ※ 1月と3月に生徒会が編集した防災学習だより「若潮」を階上地区全世帯に配布した。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
9月研修会では,地域性の違いによる防災学習の取組の違いについて知ることができた。また,研修会の中で行った代表生徒7名と参加者のディスカッションに参加した生徒の「もっと多くの人に知ってもらえるように発信していきたい」という意見から,校外で発表する機会を増やした。そして,ディスカッションの形式を防災学習発表会の第4部に取り入れ,中学生と地域住民が意見交換を行った。参加者のアンケートでは,ほとんどが「良かった」という意見で,特に,第4部の意見交換は有意義なものだったという回答が多く得られた。
助成金を受けたことで,地域住民(1460世帯)を対象とする質問紙調査の印刷用紙や,調査分析結果の考察・まとめをするための模造紙を購入することができた。また,本校防災学習アドバイザーの東北大学災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔先生への講師謝礼にあてられたため,生徒に直接講話や指導助言をいただく機会を増やすことができた。そして,日本自然災害学会オープンフォーラムに参加するための交通費にあてることで,全国の有識者や各種メディアに本校の防災学習の取組みを発信することができた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・探究的学習では,生徒の視点で地域の課題を捉え,考察,まとめを行った。
・生徒は,階上地区住民の一人であり,防災,減災を進めていくうえでは,地域との連携が大切と考えている。また,地域防災の視点を取り入れ,学校を起点とした災害に強い地域づくりを目指している。
・生徒が自分の意見を発表する経験を通して自信をつけることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・防災に関する知識や技能を一人一人の生徒が身に付けた。特に,海の安全や津波防災に関する理解を深め,意識を高めることができた。
・進んで自分の考えを述べる生徒が増えた。また,相手を意識し,表現を工夫しながら話すことができる生徒も増えた。
・習得した知識・技能を使って,課題研究に意欲的に取り組んでいた。また,課題解決できたことにより,自己肯定感の高まりが見られた。
・よりよい地域づくりのために,中学生として何ができるかを考え,地域住民に意識調査を行い,その結果と考察,そして今後の防災・減災の在り方について中学生の視点で地域に発信した。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・生徒に変容(自己肯定感の高まり,表現力の向上など)が見られたことから,職員一人一人が防災学習に誇りをもって取り組んでいる。
・全世帯を対象に質問紙調査を行ったことから,中学生の防災意識の高さを感じる保護者や地域の方が増えた。また,地区住民の方から「中学生以上に地域の大人が動かなくてはいけない」という声も聞かれた。
・総合防災訓練には階上地区で1026名が参加し,昨年度(872名)より参加人数を増加させることにもつながった。また,総合防災訓練の際に生徒から地区住民に津波避難実態調査の結果を発表したことで,階上中学校の防災学習を知り,興味をもつ人が増えた。その後の防災学習発表会にも多くの方に参加していただいた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・小・中・高の連携や,地域との連携を一層密にし,地域防災力の更なる向上を図る。
・避難所初期設営訓練をより実践的なものにするため,避難所初期設営途中で大人に引き継ぎ,大人の指示のもとでどのような活動ができるかを学習させる。
・探究的学習では,地区住民への質問紙調査にとどまらず,聞き取り調査も取り入れた新たな調査を地区住民と生徒に行い,防災に関する意識の違いを学習させる。また,活動を通して防災に関する考え方を地域の方々にも理解してもらえるようにする。そのためにも,東北大学災害科学国際研究所から指導助言をいただきながら進めていく。
・本校の防災学習の取組を地域にとどまらず多方面に発信し,多くの人々と意見を交わすことで,防災学習を持続・発展させていく。

 

 

活動内容写真

  • 部活毎に課題設定・考察

  • 学年毎防災学習(小学生への防災啓発活動)

  • 避難所初期設営訓練

  • 防災学習発表会(地区住民との意見交換)

活動において工夫した点

・「三大伝統」の一つとして,平成17年度から継続して防災学習に取り組んでいる。
・階上地区で組織されている団体(自治会や公民館,保育所,小・中・高,農協,漁協,駐在所,消防団等)と気仙沼市総務部危機管理課で組織した「階上地区防災教育推進委員会」と連携しながら活動している。
・体験的学習に加え,探究的学習を取り入れ,階上地区全世帯を対象にしたアンケートの分析結果をもとに,生徒自身が課題を見つけ,考察・まとめを行い,地域へ提言した。
・東北大学災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔先生をアドバイザーとして,防災に関する幅広い見方や考え方,専門的知識をもとに指導・助言をいただいている。

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