DR3(Disaster・Reconstruction・Reduction・Resilience)活動と課題研究の防災・減災ネットワークによる支援

神戸大学附属中等教育学校

活動に参加した児童生徒数/3~6学年22人
活動に携わった教員数/3人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/4人

実践期間2020年7月9日~2021年3月31日

活動のねらい

震災・復興・減災・レジリエンス(以下DR3)について生徒が主体的に学ぶ機会を提供することで、生徒一人ひとりの災害に対するリスクマネジメント能力を高めていきたい。校区の広い本校では生徒の居住地域により想定される災害が異なる。学校で一律に進める防災学習では当事者意識を持つことができない。そこでDR3活動に所属する生徒に校内の防災学習を計画・進行・評価させることで、「災害を生徒自らが考え学ぶ学校」と一般生徒への意識づけを図りたい。また、DR3活動と災害をテーマにした課題研究との連携を図ることで、DR3が交流している県外学校の協力を得て、想定災害の異なる地域との比較や大災害への被災後経過年数による意識差などを調査・分析させて全校生徒へのフィードバックを図る。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
【DR3活動(特別活動、課外活動)】
①校内防災学習
・昨年度の実施プログラムと重複しないように、実施プログラムを割り当てるか新たなプログラムを開発する。交流校と事前に試行して助言を受け、教材の改善・改良を図る。
・昨年度はハザードマップづくり、救命シミュレーション、クロスロードを実施し、今年度は新たに避難所に関するプログラムを検討する。
②他校との交流
・昨年度交流校と継続的、発展的に交流を進める。
・宮城県多賀城高等学校と滋賀県立守山中学・高等学校と月に1回程度のオンライン交流と年1回の相互訪問で対面交流を計画する。
③地域公立中学校への出前授業
・校内で実施した防災学習を評価・改善した学習プログラムを、地域公立中学校の生徒会役員を対象に授業を行い、生徒主体の進め方を伝達する。生徒会役員は自校の防災学習を進行するだけでなく、地域小学校に出向いて授業を行う。
【課題研究災害ゼミ(総合的な学習)】
④SSH校交流による課題研究支援
・定期交流2校に加え岩手県立釜石高等学校と鳥取県立西高等学校の計4校と課題研究(防災領域)について交流を図る。
・課題研究で必要なアンケート実施や資料収集について相互に協力し、各校のプログラム(専門家による講演会)にオンラインで参加する。
・各校の研究成果をオンラインや相互訪問で生徒発表する機会を設定する。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①助成校による課題研究支援
 本校の縦割り学年で編成している課題研究の防災・減災ゼミで、本プログラム助成校の取り組みや資料提供など個々の研究活動への支援を求める。
②研修プログラムによる動機づけ
 DR3活動を推進する生徒たちの強い動機づけとするために、宮城県と岩手県の被災地域を訪問して震災遺構や語り部から東北大震災をリアルに感じさせ、宮城県多賀城高等学校と岩手県立釜石高等学校で互いの課題研究を発表させる目的で、2021年1月20~22日の予定で研修プログラムを計画した。

3)実践の成果
1月7日の緊急事態宣言発出により研修プログラムは中止となり、宣言解除後の県内代替プログラムを模索中である。計画の一部が中止・延期されたため、校内防災学習と課題研究の防災・減災ゼミの活動、多賀城高等学校との課題研究発表会について成果を報告する。
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
〈校内防災学習の計画と進行〉
1月14日にDR3メンバーが防災学習を計画・進行した。1・2年生は各学年・クラスでクロスロード(神戸版)、3~5年生は縦割りの課題研究グループでDIGを実施した。DIGは市販品ではなく定期的に交流している宮城県多賀城高等学校生徒会が作成したオリジナルの図面を作成者の了解を得て使用した。
昨年度まで課題研究は単一学年で進めたため、減災・防災をテーマに取り組む生徒は各学年2~3名で、学年ごとに指導を受けることで深まりがなかった。本年度から複数学年で構成したため減災・防災をテーマにする生徒12名が集まり、震災、風水害、パニック、安全保障等の災害についてゼミを進めることができた。さらに本プログラム参加校テーマ一覧をセミ生徒に紹介した。個々の研究テーマと関連する助成校に資料提供の要望があり、ユネスコ協会を通じて各助成校に協力を求めた。以下の助成校より資料提供があり、対象生徒が進める研究の参考とした。
大治町立大治南小学校、大牟田市立みなと小学校、大牟田市立白川小学校
〈防災学習プログラムの開発〉
減災教育フォーラム発表者の南阿蘇中学校より提供された資料を参考に、熊本県の被災地域における減災防災教育プログラム開発のため3月12・13日に教員1名で熊本を訪ねた。阿蘇火山博物館、新阿蘇大橋、益城町、熊本城、人吉観光協会、人吉・渡地区、西原村を訪問し、被災・復興状況と学習プログラムとしての可能性について各担当者と意見交換を行った。「2度の震度7の揺れに心的ダメージが大きくて諦めや絶望を感じた」という証言、河川氾濫による被災が大地震や津波とは異なる様相であったこと、などが印象に残った。
  
写真左:新阿蘇大橋(3月7日開通) 写真中:熊本城(空中通路での特別公開) 写真右:人吉・渡地区の浸水家屋
〈課題研究オンライン発表会〉
3月17日に多賀城高等学校との課題研究発表会をオンラインで開催した。本校からはDR3メンバーから2名と防災ゼミから1名、多賀城高等学校からは防災科学科の3組が発表した。(生徒の様子) 以下に本校で発表した研究テーマを紹介する。
【本校課題研究発表テーマ】
・「干し野菜を回転備蓄にするための考察ー災害食の献立提案ー」
・「地震発生時における視覚障害者の避難支援についての提案」
・「幼児の日常的な防災意識を高める新たな防災教育の提案―映像記憶能力に注目してー

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
防災学習を経験した一般生徒を対象にした事後アンケートでは、昨年度と同程度で5段階中の3.9点であった。生徒主体の防災学習を開始した初年度(2017年度)はその前年より大きく更新したが、2年目からは同程度の高い関心を示している。1月から導入したBYODによりDIGでは生徒が持参した情報端末を積極的に活用する姿が見られた。1年生では学年の総合的な学習で阪神淡路大震災を扱ったことで、自然災害や本校の防災体制について興味を持ち、1月中は昼休みと放課後に1年生からインタビューを多数受けることとなった。数字からは分からない関心・意欲の高さを感じることができた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校が生徒主体で防災学習を計画・進行し、減災・防災に取り組む他校との交流を始めてから5年目となる。
生徒の危機管理意識を高めるためには、主体的な学習機会が必要であること、教科や総合的な学習と関連させると効果的であること、を職員で共有でき学校体制で取り組めるようになった。また2年前より避難所準備と初期対応を当番制としたことで、地域や自治体の固有課題への認識や日頃の安全点検意識が高まった。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
今後は減災・防災に取り組む複数校との同時交流や各校とつながりのある他校との新たな交流など、交流の輪を拡大していきたい。本プログラム助成校とも互いの取り組みの助力となる連携を模索していきたい。高齢化が進んでいる地域防災福祉コミュニティはコロナの影響で文書会議のみとなっているため、DR3がコミュニティ会議に参加して地域課題を共有する機会がない状況である。現状が収束傾向となれば計画していた地域連携を進めていきたい。

活動内容写真

活動において工夫した点

生徒主体で計画・進行する防災学習を、校内だけでなく地域の公立校で出前授業を計画している。コロナの影響で訪問や対面が困難であるが、オンライン等で可能な限り発信する。
減災・防災をテーマとして課題研究に取り組んでいる高等学校と研究成果の発表会を開催した。上述の宮城県多賀城高等学校以外には、岩手県立釜石高等学校、鳥取県立鳥取西高等学校、滋賀県立守山高等学校とそれぞれに交流を計画している。

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