NO.169
君たちこそ希望の星
麗澤大学教授・目黒ユネスコ協会顧問 服部英二
 
 
 緑濃き長野、夏の白雲と輝く太陽のもとに集った各国の若者達と、三日間共に語り合えたことは、私にとっても大きな喜びでした。一人一人が個性を発揮し、しかも自分が何ができるかを積極的に探す姿は感動的でした。
 IT革命の時代に入っても、究極のコミュニケーションは人と人との出会いです。テレビのニュースが代表するように、インフォメーションは一方的にそれを流す側と受動的にそれを受けとる側に別れますが、コミュニケーションはその本義からして「双方向的」です。それは開かれた心と心の響き合う世界です。その時、文化的アイデンティティーの違いは出会った双方を豊かにします。
 今世紀地球環境学の先駆となったジャック・イヴ・クストーは、生前このように証言しました。
 「生物の種の数の多い所では生態系(エコ・システム)は強い。南極のように種の数の少ない所では生態系は脆(もろ)い。それは文化にもそのまま当てはまる。」
 クストーの証言は重大な意味をもっています。一つの文化の存続には他の諸々の文化の存在が不可欠だ、というのです。文化の多様性こそが人類の宝であり、生存の鍵なのです。一つの文化は他の文化と対話することによって生き、そして成長します。この意味で、文化的アイデンティティーとは静止した存在(ザイン)ではなく、「生成(ウェルデン)」なのです。
 もし世界が、もはや出会うべき相手をもたない単一文化となる時があれば、それは人類の終焉(しゅうえん)の時でありましょう。「平和の文化国際年」の今年、私達はこの文化の実相に着目し、2001年のテーマとなる「文明間の対話」の意義を把握せねばなりません。他なるものによって自らが生かされていることを知ること・・・・これが平和の文化の核心です。
 澄み切った空気の中、和田村に集まった若者達。15を数える文化をそれぞれの胸に抱きながら、共に笑った君たち。君たちの輝いた顔こそが、私には地球の未来のための希望の星とうつりました。
 
 
 
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