ユネスコの提唱と国連の議決によって今年は「平和の文化国際年」とされた。「平和の文化」は国連が設立されて以来50年の歴史の中から生まれた新しい考え方である。人類の平和を愛する文化を創造しようとする願いが込められている。
これまで平和は国家間に戦争が無い状態を意味していた。そして過去50年間に大規模な戦争は少な
くなり、そして冷戦が終わった。しかし、ヒト、モノ、カネ、そして情報が地球的に環流し国家の壁が著しく低くなった今日、民族・宗教・地域間の争い、つまり国内紛争が多発している。第二次大戦後の50年間で死者1000人を超える紛争だけで39件、1996年以降も増えていて多くの犠牲者が出ている。
(※1参照)
第二次世界大戦後1995年までの50年間に1,000人以上の犠牲者を出した39の紛争の地域分布
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地 域
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ア ジ ア |
アフリカ
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中南米
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ヨーロッパ
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アジア太平洋 |
中近東 |
紛争件数 |
11件 |
7件 |
12件 |
3件 |
6件 |
死者数 |
135万 |
198万 |
360万 |
14万 |
33万 |
避難民数 |
195万 |
307万 |
675万 |
10万 |
188万 |
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出典 紛争の地域分布、件数、死者数はMichael E.Brown.ed.,The International Dimension of Internal Conflict. The IMT Press,Massachusetts,1996,pp.4-7
避難民数は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、The Stage of the World's Refugees 1996,Oxford University Press,1996,pp.248-250)
註 この表では、通常の国連の統計に従い、アジアはトルコから日本までの50ケ国近い国を含む。中近東(レバノンから旧ソ連から独立した中央アジア
5ケ国を含む)とアジア・太平洋に分けた。但し、イスラエルは中近東に含めた。アフリカは、サハラ以南のみならず北アフリカ諸国を含む。
ヨーロッパには、旧ソ連から独立した東欧諸国、ロシア等が含まれる。なお、北米は、ユネスコの統計ではヨーロッパに含まれるが、ここでは除外した。
なお、ある国家で複数回生じた紛争は複数回として計算した。
取材者註 国家間の戦争(第二次大戦)による死者よりも紛争による死者の方がはるかに多い。 この統計の後インドネシヤ紛争ほか数千人単位の紛争は後を絶たない。 1000人未満の紛争はこの100倍はあるであろうといわれる。
国家間だけでなく社会、そして最終的にはヒトとヒトの間が平和な状態にあることが欠かせなくなっている。どうすれば紛争を防げるのかという基本的問題に取り組むことが求められる時代に入った。
平和の構築の障害は「格差」であることが明かになってきた。最も重要な格差は人種格差と宗教格差であるがその底にあるものは経済格差である。これが克服できればいくつかの問題が解決することができることがわかってきた。協力して経済能力を移転する、すなわち、富の移転を行う以外にはない。日本もこの30年、アジアに対して経済の格差を縮める努力をし、大変効果をあげた。お金の使い方を国が全て決めるのではなく、市民社会が必要と考えられるものに使うという方法をとれば、もっと格差を是正することができる。
既にそして今後、政府と共同で果たすNGOの役割はますます大きくなっている。地域社会においてNGOができることが非常に増えている。(※2)

鈴木佑司氏 |
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(※2) 私たちに出来ること、すべきこと: NGOの歩みとのかかわりで
@ 第一世代のNGO:理念的には救援と社会福祉、行動的にはモノの供与
A 第二世代のNGO :理念的には零細・自助型地方開発、
行動的には技術移転と知識移転による能力開発
B 第三世代のNGO :理念的には持続可能なシステム開発、
(現在の段階) 行動的にはモノやサービスの提供者であることをやめ、
政府と住民とのコーディネーション、政府との共同作業
C 第四世代のNGO :理念的には構造改革、行動的にはNGO連帯
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地域にとって大事な問題に取り組むことが大切である。地域社会や住民一人一人の役割が大切になっているといえる。私たちは何をすべきなのだろうか。世界で一番ゴミを出さない地方政府はハワイである。ハワイは素晴らしい環境が守られている。
平和とは「ゴミを出さない」「隣の人を大切にする」「自分の親と上手につき合える」こと、つまり、そのように私たちの身近な足元にあるのだと申し上げたい。
2000.7.31
お持ち下さった資料は数点ありますがスペースの都合で上記2表のみ掲載いたしました。 文責は広報活動委員会にあります
服部英二氏のリトリート講評 服部氏には昨年長大なレクチャーを頂きその要旨はショートニュース159号に掲載された。今回巻頭言
に頂いた内容を含め次のような講評を頂いた。 85ケ国を訪れた経験、シルクロード探査の実績の上にやさしく、しかし含蓄の多い感動の講評であった。
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@ 今回のテーマ「次世代に必用なもの、無くしたいもの」に関して。
市場原理(フリーマーケット)は過去のもの、21世紀の指導原理はコンパッション・「愛」である。
コン=共に・分かち合う。パッション=パトス・ペイン・痛み (デリーの国際会議で多くの識者の共通認識・同感である)
A 文化の出会い、人の出会いの大切さに関して。
ジャック イブ クストーの言葉「生命の種の数の多いところでは生態系は強い、少ない所では脆い。
それは文明にもあてはまる。」を引用し、多くの出会いが貴方を豊かにし、文化も振興する。
B 国際結婚。日本人はかつて百済、新羅、高句麗、はてはタミール人まで受け入れて文化を振興した国際結婚の経験国である。
出会いが大切。良い出会いがあるように祈ります。
C 言葉は文化である。意志伝達の手段ではない。(「世界」9月号に「多言語教育のすすめ」を執筆されている)
D 国際機関が求める人材の条件。第一に人柄。二番目に能力を含んだ言語(判断力・分析力・決断力)
この逆ではない。三・四がなくて専門能力は五番目ぐらい。(日本人に共通の人柄・コミュニケーション力・大きな思惟の不足)
E 出会いの喜び。国境(鈴木佑司さんも触れたようにそれはたつた250年の歴史しかないが)を越えてここに多くの人と出会えたことが嬉しい。私の喜びのしるしとして「君達は21世紀を担う希望の星である」と申し上げたい。
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