NO.186
2002.4.10

ネパールで平和を考える
 
目黒ユネスコ協会・副会長 平田康夫
 「今ネパールは反政府運動が厳しさを増しているので、気をつけるように」とネパールに来る前に言われました。その言葉どおり昨年4月の着任時には飛行機汚職に絡んで首相退陣要求の激しいデモ(こちらではバンダと言います)が行われ、私たちのために予定されていたホテルは中心地から離れたところに変更されたほどです。しかしまだ左翼政党も歩調をあわせていましたし、抗議はしても暴力で要求を満たそうと考えるまでには至っていなかったのです。今から思えばこの時はまだ落ち着いた状態だったように思います。
 
 6月に入り、国王の惨殺というショッキングな事件が起こりました。世界の中では比較的落ち着いた国という印象を与えていたネパールにとんでもない事件が起こった、まるでシェークスピアのドラマのような事件だとも報道されました。ことの真相は未だにはっきりしませんが、これを契機にコイララ首相は退陣し、新しく就任したデウバ氏は、極左のマオイストと話し合いにより問題を解決しようと4ヶ月にわたり交渉を進めてきました。

  しかしマオイストの「王制の廃止、それに伴う共和制実施のための憲法改正」という要求を政府が飲めるわけがなく交渉は決裂し、マオイストは武装闘争を宣言し、政府は11月26日に非常事態宣言を発令しました。
 
 こうして何ヶ月も内戦状態が続き、双方の犠牲者が今日は何人出たという報道がされない日はなく、「ネパールのアフガニスタン化」が懸念されています。
 
 戦争は暴力で自分達の要求を満たそうとして起こるわけですが、暴力によっては何も解決しません。人と人との間に不信感が広がるだけです。お互いを理解し、納得し、協力することからしか基本的な真の成果は得られません。
 
 表題に「平和を考える」と書きましたが、「考える」とは当然行動することを含んでいます。今ネパールで私達がしていることはホンの小さなことに過ぎませんが、どんなに僅かなことでも時間が掛かろうとも話し合いによってしか問題は解決しません。もうだめだと思われるときこそ相手を知ろうとすること、相手と自分の差異を認め合うこと、そこに可能性を見出す情熱を持って一歩を踏み出すことです。今こそユネスコの精神が生かされなければならない時です。
 
  平田康夫さんは目黒ユネスコ協会副会長、JICAから派遣されてネパールでご専門を活かし
  農業協同組合の経営指導に当たっています。4月に一時帰国されて目ユ協の総会に出席できそ
 うだと連絡がありました。ご夫妻揃ってのネパールでのご活躍にご無事とご発展を祈ります。


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