No.195−4


「文楽」をたのしむ  解説と実演 報告
 
第15回目黒区国際交流ひろば 主催:目黒区教育委員会 主管:目黒ユネスコ協会
日時;2003年2月24日 会場:めぐろパーシモンホール(小)
 
  文楽について      後藤静夫 国立文楽劇場 普及養成課長
  義太夫節について  
     大夫の役割    竹本津国大夫(たけもとつくにたゆう)(文楽協会技芸員)
     三味線の役割   野澤喜一朗(のざわきいちろう)  (文楽協会技芸員)
  実演 (男の表現)  「傾城反魂香・吃又(けいせいはんごんこう・どもまた)」より 雅楽之介(うたのすけ)の注進(ちゅうしん)
     (女の表現)  「艶容女舞衣・酒屋(はですがたおんなまいぎぬ・さかや)」より お園のクドキ
     浄瑠璃 竹本津国大夫
     三味線 野澤喜一朗
     人 形 吉田幸助 他
  人形 三人遣いについて  吉田幸助(文楽協会技芸員)                 吉田玉佳 
               桐竹紋臣 
  通訳 マーク 大島
 
 大変簡素な舞台づくりでした。上手、平台の上に三味線と浄瑠璃大夫のための座布団が2枚、下手に解説の後藤氏と通訳のマーク大島氏のためのマイクが立つしつらえ。真ん中には文楽の舞台をイメージして、およそ84cmの高さを示すロープ。この舞台でここまで深い文楽の世界を垣間見ることが出来ようとは!
 「大夫の小道具のいろいろ」「文楽の三味線や、ばちについて」「何役もの登場人物ほか、情景・事件の背景までも全てを演じ分ける大夫」「曲の心を弾く事を大切に、大夫と心をひとつにし、その語りを助ける義太夫の三味線」「人形三人使いのチームプレイは如何に?」「人形の構造・しかけ」「足がない女の人形」「能面に似た人形の顔」「人形の楽しさは人形が人間同様にまるで生きているように見えること」「さらに人間の演
技を越えた人形ならではの美しい形“うしろぶり”」などなどこれはもう、「文楽大百科事典」そのも
の。出演者の方たちのサービス精神旺盛な「伝えようとする心」と「観客の観ようとする心」が調和して、大変充実した交流のひろばを感じとることが出来ました。12カ国以上の国の方々をお迎えし、通訳のマーク大島氏の的確な英語解説で、内容が一層濃いものとなりました。休憩なしの2時間が短く感じられ、満ち足りた幸福感に浸ったひとときでした。
 国際交流ひろばは今年で15回目。そのうち日本文化を紹介したものは12回。毎年今年は何にしようかと頭を悩ますのが常なのですが、「文楽だ!」との思いを強くしたのは昨年のユネスコ全国大会の折。文楽が「人類の口承及び無形遺産の傑作」として、ユネスコによって認定される見込みと知ったことが契機でした。ユネスコは世界の無形文化遺産保護の一環として、平成13年「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」を行いました。これは歴史、芸術、民族学、社会学、人類学、言語学、文学などの観点からたぐいない価値を有する伝統的文化の継承と発展を目的としており、日本からは能楽が先ず第1回傑作として宣言され、文楽は現在その第2回傑作候補としてその宣言を待っている状況にあるとのこと。昨年「喜多流能」の紹介をした目黒ユネスコ協会としては、今年は文楽を紹介する好機と考え国立文楽劇場にお願いをしました。そして国立文楽劇場・国立劇場のご配慮により今回の公演を実現することが出来ました。 月曜日の夜という条件の悪さにも拘わらず200席の定員に対し300名を超える申込を頂き、多くの方々にお断りをせざるを得ませんでした。この人気のシリーズ、さて来年は何になるでしょうか。乞うご期待。 
                    事務局  原田富美子記   撮影 望月 昇                               
文楽の次の公演は下記の通りです。吉田簑太郎改め三世桐竹勘十郎襲名披露口上もあります。
日時:5月10日(土)−25日(日) 会場:国立劇場小劇場 電話予約開始4月6日 03-3230-3000


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