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  松浦晃一郎ユネスコ事務局長 ロンドン大学より 名誉博士号 贈らる
 
 
 ユネスコ事務局長、松浦晃一郎氏はこの度ロンドン大学教育学研究所から名誉博士号を贈られた。教育がユネスコにおいて大きなテーマであることを考えるとき、教育学研究所から名誉博士号を贈られたことは大きな名誉であり、ご本人の喜びは勿論、民間ユネスコ運動にかかわる者としてともに喜びたい。
 この事の詳細が下記のように目黒ユネスコ協会員から伝えられた。レポートを送ってくれた佐伯さんはごく最近会員になったばかり。偶然にもご自分の博士号授与式で松浦氏の授与にも立ち会うことになった模様を驚きと共に一報して下さった。現在、英国で勉学された英語力を目黒ユネスコ協会で役立てたいと希望され、ショートニュース英訳のボランティアを引き受けておられる。
 

ユネスコ 事務局長のロンドン大学教育学研究所における
名誉博士号ご拝受式に参席させていただいて

 
佐伯 知美
 
 ユネスコ事務局長、松浦晃一郎氏のロンドン大学教育学研究所における名誉博士号ご拝受をまことに慶ばしく幸いに存じます。また、事務局長の名誉博士号ご拝受式に、本年度当研究所博士号取得者として参席させていただけましたこと、またご拝受のご様子を学生席最前列で拝見させていただけましたこと、まことに有り難く身に余る光栄と存じます。歴史学者のRichard Aldrich (リチャードオールドリッチ)当研究所所属教授によるご経歴ご紹介への答辞として今後のユネスコ活動のご抱負を述べられた際のご様子、名誉博士号授与の証しとしてロンドン大学副総長から礼服の肩当てを手向けられた際のご様子、壇上から参席者に下さった笑顔のご会釈のご様子、事務局長のご所作のすべてが麗しく、私は、日本人としての慶び、ロンドン大学教育学研究所卒業生としての誇りが入り混じり、夢見心地でした。目黒ユネスコ協会でご奉仕を始めさせていただいたその年に、思いがけずもこのような幸せな経験をさせていただけましたことに、ユネスコとの深い縁を覚えます。
 
「教育を質の観点から追及することの必要性」が、事務局長の答辞の中心的論旨でした。事務局長は、すべての人間は「知ることの学び、行うことの学び、共に生きることの学び、存在することの学びを含む教育」を享受する権利を有することを述べたDakar Framework for Actionの一節を用いて、質の高い教育とは、「自他共存の実践」であることを、説明されました。また、「現在ほど全人類の結束が実感され、かつその脆弱さをも実感され得た時代はかつてなかった。それ故に、多様性と特異性を考慮した教育の夢を再構築しなければならない。また一方で、共有する普遍的な価値を再確認しなければならない。」と述べられました。まことに真理と存じます。ユネスコ憲章前文に「文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。」と明記されているとおり、共存の精神に基づいた世界平和の構築及び保持のための教育の実践は、人間の尊厳にとって不可欠なものであります。
 
 義務教育課程の子どもたちを対象とした学習心理学を研究している者として、実践性を重んじる事務局長の教育観に激励されました。質の高い教育の実践に微力ながらも貢献できますよう邁進する所存であります。研究成果が、世界中の子どもたちのために、また子どもたちの成長を支援するかたたちのために有益であることを願います。しかし、まことに個人の業績には限りがあります。ですから、質の高い教育の実践の為には、ユネスコ憲章前文に提唱されている「すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探求され、且つ、思想と知識が自由に交換される」環境が必要です。また、次世代を担う子どもたちが、人種、性、言語及び宗教の差別をなくして、少なくとも生存権と学習権を享受することを保証される環境が必要です。そのような環境の実現の為に、アメリカをはじめ、より多くの国のユネスコ憲章承認及びユネスコ加盟を歓迎します。
 
  この式典において松浦事務局長の「答辞」として述べられたスピーチの全文は幸いにも佐伯さんの手に託されました。
 佐伯さんの手で日本語に翻訳され、ホムページに掲載されましたのでご覧ください。(日・英とも)

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