第59回 日本ユネスコ運動全国大会in札幌:報告 
日時:2003年5月24日(土)〜25日(日)
場所:京王プラザホテル札幌
主催:財団法人日本ユネスコ協会連盟
   北海道ユネスコ協会連盟
   札幌ユネスコ協会
主題:対話と協調-いま求められるユネスコ憲章への回帰
 
 リラの花が咲きはじめ、新緑が美しい札幌に全国から約500余名もの参加者が集った。アメリカから「ユネスコを守るアメリカ市民の会」会長リチャード・アーントゥ氏を迎えて行われた「9.11以後のアメリカ、世界の危機」というシンポジウムに加え、記念講演は、オホーツク村元村長、獣医師・竹田津 実氏の「自然・保護から創成へ向かって」と何れも時宜にかなった充実したものであった。(写真シンポジウム:左から日ユ協連野口理事長(司会)、アーントゥ氏、通訳、服部英二氏
 
  記念講演自然・保護から創成へ向かって
講師:獣医師・ナショナルトラスト「オホーツク村」元村長 竹田津 実氏
 手術台の上の動物が私に何かを語っているようだ、と気づいてから、近隣の仲間とよく話し合うようになった。「おまえたち人間が自然を破壊している。」「早く何とかしないと、おまえたち人間も、俺たちのように不治の病に冒されるぞ。」仲間たちも同じ思いであった。
 環境問題が論じられるようになって数十年。論じることは大切だが、実行がさらに大切だ。「一本の木を植えてほしい。蟻一匹の駆除のために必要以上の除虫剤は使わないでほしい。たい肥を使ったおいしい(無農薬)農産物を沢山食べてほしい。」という私たちの願いをよそに、オホーツク村にも酸性雨が降り、農薬で河川は荒れている。
 講師は、多くの事例を挙げ、環境汚染の実情を静かに語ってくれた。翌日の第4分科会では環境問題をとりあげ、32年前に同じく札幌で開催された全国大会のテーマも環境問題であったこと、事態は少しも改善されていないこと、世界規模での解決に向けた実行をひとりひとりがすべき時が、今、来ているとのことであった。
 
 シンポジウム 9.11以後のアメリカ、世界の危機ユネスコ復帰後の米国市民との連帯
パネリスト  ユネスコを守るアメリカ市民の会 会長 リチャード・アーントゥ氏
       日本ユネスコ協会連盟評議員・世界連盟執行委員    服部英二氏
 初来日のアーントゥ氏は、本来ここに来ることを望んでいた恩師ジョン・E・フォーブス氏の紹介から始められた。そのフォーブス氏はユネスコ事務次長を経験され、1984年アメリカがユネスコを脱退した際直ちに、ガルブレイズ、マクナマラ、ヤング等民間知識人・外交官経験者に呼びかけ「ユネスコの普遍性を守るアメリカ市民の会」を創設された方で、1986年、都ユ連主催の講演会に来日されておられる。
 アーントゥ氏はアメリカ社会の特性を歴史的に述べ、9.11がアメリカ人の精神にあまりにも深い傷を与え、その反動が大きく表れたと語り、民間ユネスコ活動については「日本の皆さんに学びたい、皆さんのアメリカの友人に『ユネスコ復帰ガンバレ!』という手紙を沢山書いてくださ写真:アーントゥ氏 い。」と締めくくられた。 
 アーントゥ氏に先立ち、目黒ユネスコ協会の顧問でもある服部英二氏は、先のジョン・E・フォーブス氏のことを、アメリカがユネスコを脱退した際、ユネスコ事務次長を辞任し、すべての公職を捨て、自宅を事務局とし、夫人とともに手作りで「ユネスコの普遍性を守るアメリカ市民の会」を創設した人物であると紹介した。アメリカの良心の代表であり、その愛弟子がアーントゥ氏であること、しかし、そのような人は非常に少ない実情を述べられた。その上で、アメリカの良心を呼び覚ますためにもアーントゥ氏を激励したいとのことであった。
 目黒ユネスコ協会は、英文ショートニュース発行やホームページにも英文のページを設けており、リトリート参加者やフレンドシップメンバーが各国で、ユネスコ活動の紹介にも一翼を担っている実績がある。今後さらに多くの会員が外国の友人に、草の根からユネスコの普及を呼びかけることが必要であるし、身近に出来る有効なユネスコ活動であると痛感した。
 青年グループは第一日夜、独自のプログラムで結束を固め、閉会式には壇上に勢揃いしユネスコの未来を背負う覚悟のアピールを「私たちはかすがいになる」と唱えヤンヤの喝采を受け花を添えた。  (写真右)
 なお、大会には目ユ協から成人8名、青年7名が参加した。レセプションをはじめ全国のユネスコ会員との交流、見知らぬ土地の新しい発見等々、参加者一同心身ともにリフレッシュして帰京した。この秋(9月12金〜13土)には名勝地「世界遺産の日光」で関東ブロック研究大会が開催される。普段は非公開の見学ほか様々なユネスコに相応しい企画をたてているとのこと、多くの会員が今から予定に入れて参加されることをお勧めしたい。又来年の全国大会は四国・松山で開催されることが決定している。(日時未定)
 
お断り:「ユネスコを守るアメリカ市民の会」リチャード・アーントゥ氏はアメリカがユネスコに復帰する声明を出した時点で 「ユネスコの普遍性を守るアメリカ市民の会」を改称したとの説明がありました。


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