No.201                                      2003.10.8 
春 へ む け て
目黒ユネスコ協会会長 加藤玲子
鵙という鳥は、
百舌ともかきます。
あまりけたたましく     
なきたてるからでしょう。
よいお天気の日に木の上で    
     キ キ キ
     キ キ キ
 と、鵙は片仮名でしゃべります。






鵙は平仮名は知りません。
英語も知りません。
知っているのはキの字です。
朝から晩まで
  キ キ キ
となきます。














                                    「動物詩集」室生犀星 作

小学生の頃、この詩がなぜか好きだつた。

 吹きぬける風 澄みわたる空 そして流れる雲も美しい秋。この季節 樹も 草も 鳥も 春への支度に忙しい。水仙は ぐんぐんと力強い芽をもたげ こぶしもその枝先に蕾を宿す。春が花開く季であるならば 秋は春にむけての始動の季であるようだ。
 1954年秋 目黒ユネスコ協会は誕生した。10月3日には 49回の創立記念日をむかえた。翌4日。交流サロン「韓国を知ろう!」のプログラムでは 韓国の伝統的な打楽器ヂヤンゴの歯切れのよいリズムが 会場一杯に鳴り響いた。 図らずも韓国のフレンドシップメンバーから「祝いの響き」を贈っていただいたようであった。 
 今秋、パリで開催されている「ユネスコ総会」で アメリカは19年ぶりにユネスコへ復帰する。いま、1986年秋の一夕を思いだす。それは 来日された「ユネスコの普遍性を守るアメリカ市民の会」会長のジョン・フォーブス氏を囲んで 一日も早いアメリカのユネスコ復帰を祈るような気持ですごした夜だった。★

 昨今の世界情勢や、国内の悲しい出来事をみるにつけ ユネスコの理念に基づく「春」の訪れは はたして何時なのか。国の内外を問わず人びとの日々の営みが平安となる日は何時来るのか と問いたくもなる。だが 諦めてはいけない と自らに言い聞かせる。
そして 豊かな心を育む環境を整えるさらなる作業が欠かせないと あらためて思う。私たちのユネスコ運動が そのために少しでも役立つことを願う。

 ところで 秋の鳥 鵙は キの字しか知らないわけではない。いろいろな鳥の物まねが上手だという。それは、捕獲のためか知識欲のためかは知らない。
それでも 私が この詩を今もなお好きなことにかわりはない。
 
★ユネスコ公開講座「ジョン・フォーブス氏に聞く」都ユ連主催(当時:都ユ連会長:伊藤昇、事務局長 加藤玲子)於 国際文化会館。氏は、元ユネスコ事務次長。通訳には ユネスコから帰国された相良憲昭氏。講演会終了後。氏をかこんで会食。目黒ユ協の提案で 急遽浄財を集め、市民の会へささやかながら支援金もお送りした。目黒ユネスコ協会は、日本の他の民間ユネスコ協会とともにアメリカのユネスコ復帰をこころから喜び 同会(会の名称は、現在「ユネスコを守るアメリカ市民の会」と改名された)への最大の応援を送り続けている。


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