児童一人一人が「自分の命は自分で守る」ための危機回避能力の育成―地域と連携した防災教育の充実― 

坂東市立岩井第二小学校

活動に参加した児童生徒数/1~6学年535人
活動に携わった教員数/45人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/570人

実践期間2018年4月28日~2019年3月8日

活動のねらい

地域と連携した防災教育や様々な体験活動を通して,災害に対する防災意識や理解を深め,自分の命は自分で守る的確な判断・行動をとることのできる児童を育成する。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール

期  日

内     容 参 加 者
4月28日(土)

 
・『親子で歩こう会』(通学路調査)
・引き渡し訓練
全保護者,全児童,坂東市公民館岩井第二分
(以下,第二分館)
5月16日(水) ・事前打ち合わせ(第2回合同防災訓練の内容等) 第二分館,学校職員
6月 5日(火)

 
・第1回学校防災連絡会議(今年度の実施計画等について) 学校防災連絡会議役員
6月29日(金) ・第2回岩井第二地区・岩井第二小学校合同防災訓練
 事前準備
第二分館,学校職員,保護者,地域
7月 1日(日)

 
・第2回岩井第二地区・岩井第二小学校合同防災訓練
  協力団体 陸上自衛隊古河駐屯地・坂東消防署
  ・市交通防災課・市市民協働課・市社会福祉協議会
  ・地区消防団
児童,学校職員,保護者,地域,協力団体
7月13日(金)

 
・防災マップづくりのための現地調査,110番の家の確認 全児童,保護者,学校職員,地域
7月17日(火)
 ~20日(金)
・地域防災マップ作成

 
5・6年生児童,学校職員
7月13日(金)

 
・第2回学校防災連絡会議
・『学校に泊まろう』事前準備会
学校防災連絡会議役員,子ども会育成会,
第二分館,学校職員
8月  4日(土)
 ~ 5日(日)
・宿泊型避難所体験活動『学校に泊まろう』
・防災学習  講師 市交通防災課
・段ボールハウスづくり
・避難所運営(HUG)ゲーム 講師 市民協働課職員
6年生児童(希望者),子ども会育成会,第二分館,学校職員,協力団体
9月15日(土)
~10月15日(月)
・地域防災マップ展 市内公共施設3箇所 学校職員,第二分館
10月24日(水)

 
・防災講演会
  演題「地震が起こるメカニズムとその際のとるべき
     行動について」
  (Dr.ナダレンジャーの自然災害科学実験教室)講師
   国立研究開発法人 防災科学技術研究所
   納口泰明 氏(Dr.ナダレンジャー)
   罇 優子 氏(ナダレンコ)
5・6年生児童,保護者,地域,学校職員
3月 8日(金)

 
・第2回学校防災連絡会議(今年度の振り返りと次年度の計画) 学校防災連絡会議役員

 
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。    昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
①防災学習に関する授業・学習活動についてのカリキュラムの見直し・作成
ア 全校一斉の防災タイムの設置
 本校は,毎週金曜日の朝の時間にNIEタイムを実施している。新聞記事を活用して,その記事に対する各自の考えや感想を書くようにしている。その時間を活用し,毎月第4金曜日は,災害についての新聞記事を活用し,現在,国内外で起きている災害について,当事者意識をもちながら考えや感想をまとめるようにしている。
イ 学級活動における防災学習の実施
 月1回,命を守る訓練にあわせて,1~6学年の全学級で学級活動における防災学習を実施している。災害時のある場面を設定し,その時自分がとるべき行動をその理由もあわせて考える。さらに,グループ活動や意見交流を通してよりよい行動について考えを深め,判断力を高められるようにしている。
② 命を守る訓練の見直し
ア 避難訓練年間計画の見直し
 昨年度までの学期1回の避難訓練から月1回の割合で実施するように見直しをした。授業中・休み時間・下校時等,様々な場面設定をし,児童だけでいる場合でも,自分で判断し,的確な行動がとれるように回数を重ねることにした。また,上級生が下級生の避難の手助けや声かけをする等,高学年は,防災学習で学んだ「共助」に関する行動もとれるように訓練していくようにした。また,「避難訓練」という名称から「命を守る訓練」とし,児童一人一人が自分の命は自分で守るという意識を高められるようにした。
イ 予告なしの命を守る訓練の実施
 防災タイムや学級活動等で学んだことを実践につなげられるか,自分の命は自分で守るための適切な判断や行動がとれるか,を目的とし,本年度はじめて予告なしの訓練を計画し実施した。それぞれの発達段階に応じためあてや具体的な行動目標をもたせ,主体的に行動できるようにした。
 11月1日に実施された,全国一斉のシェイクアウト訓練にも参加した。
③ 体験を重視した防災講演会の実施
ア 近隣の防災に関する機関の活用
 児童が学んでいる災害についての知識や理解を深めるため,昨年度から近隣の国立研究開発法人防災科学技術研究所へ講師を依頼している。本年度は,2名の講師の方に来ていただくことができた。また,地域の方々にも案内し,参加を呼びかけている。
イ 体験を通した防災学習
 災害についての知識や理解の定着を目指し,本年度は,講演会に実験や体験活動を取り入れた。地震が起きたときの揺れや液状化現象等について災害メカニズムの見える化を図りながら学習したため,児童は楽しく,驚きや発見をもちながら学ぶことができた。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・防災学習に関するカリキュラムの見直しをし学習内容を明確に位置づけたことで,発達段階に応じた指導を計画的に実施することができた。その結果,児童一人一人の思考力・判断力・表現力等を育成することができた。
・地域と連携しながら計画的に体験活動を取り入れ,災害時の具体的なとるべき行動について,児童・地域・保護者が一緒に考えることで,児童のみならず地域や保護者の防災に対する意識を高めることができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・防災学習に関する授業や活動を意図的・計画的に設定し,防災に対する見方・考え方について多方面から意見交流しながら自分の考え深めたことで,児童一人一人の危機回避能力を育てることができた。
・命を守る訓練では,回を重ねるごとに児童の迅速な判断・行動が見られるようになった。災害や防災についての様々な体験活動や学習を通して,児童は防災に対する知識・理解を深め,自分の命は自分で守るための的確な判断・行動をとる力を身につけた。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・指導計画を見直し,職員間で共通理解を図りながら全校で防災教育に取り組んだことで,実際の災害時につながる実効性のある指導につなげることができた。
・親子で歩こう会・合同防災訓練・宿泊型避難所体験学習等を実施し,災害が起きたときの判断や行動について具体的に親子で話し合う場を設けたことで,保護者の防災に対する意識の高揚につながった。
・地域と学校が連携し,様々な体験活動を実施したことにより,日頃の防災に対する備えの大切さを地域の方々も実感し,災害に対する備えを自分でできることから行っていこうという意識を高めることができた。また,地域として子どもを守ることに力を置く等,地域の防災力の強化を図るために,学校での防災学習を支援する団体が増えた。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
① 体系的な防災教育に向けた単元配列一覧の作成
・防災学習に係る学級活動での指導については,整備を進めることができた。今後は,防災教育に係る学年別単元配列一覧を作成し,6年間を見通した防災教育,発達段階に応じた資質・能力の育成を図り,児童が身に付ける力が体系的に積み重ねられるようにする。
② 地域や家庭とのさらなる連携の推進
・地域との合同防災訓練や防災マップづくり,宿泊型避難所体験学習等の実施により,防災に対する地域の意識は向上した。今後,より機能的な体験学習になるように,防災訓練や避難所体験学習の内容の検討,実生活で役立つ防災マップのまとめ方等について見直しをし,多くの地域の方々が必要性をもって参加できるように整備していく。
・本年度実施した「親子で歩こう会」は,防災について家庭で話し合うよい機会になった。今後,防災について家庭で話合いをもつ場を意図的・計画的に設定し,家庭との連携を強めていく。

 

活動内容写真

  • 地区合同防災訓練

  • 地区合同防災訓練

  • 防災マップ展

  • 宿泊型避難所体験学習(HUGゲーム)

  • 防災講演会

  • 命を守る訓練

活動において工夫した点

① 地域の組織を活用した体験活動の重視
・本年度における防災訓練時の地域参加団体の増加等,地域と連携した防災訓練を推進するため,体験活動実施後は常に課題からの改善を図っている。年3回の学校防災連絡会議や随時実施している坂東市公民館岩井第二分館役員・区長会長等との協議等,地域の組織を活用し協働して進めることで,学校と地域が一体となって防災に対する意識を高めている。
② 児童の思考力・判断力・表現力等を育成するためのカリキュラムの整備
・昨年度重視した体験活動から学んだことを,児童一人一人の資質・能力として定着できるようにするために,防災学習のカリキュラムの見直しを図った。結果,全校一斉に実施する「防災タイム」の設置,命を守る訓練と連動させた学級活動の充実等,他者と意見交流等をしながら防災に対する考え方を深め,災害時の判断力を全校あげて育成することができた。

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