地域との豊かなつながりのなかで、ESDの理念に基づく防災教育を実践することを通して、『自ら学び考え、高め合う子』を育成する

奈良市立鶴舞小学校

活動に参加した児童生徒数/1~6学年313人
活動に携わった教員数/22人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/265人

実践期間2019年5月8日~2020年2月28日

活動のねらい

活動の目的
・避難所キッズスタッフとして、支援する側としての自覚と責任を持ち、進んで人のために役立とうとする意欲を育てる。
・キャリア教育の一貫として、避難所キッズスタッフとしての活動を地域の方と協働することを通して、自らの役割や地域とのつながりを考える。
・「ぼうけんの森」の間伐材が災害時の薪燃料として活用できることを知り、ぼうけんの森の整備活動が環境を守るだけでなく、防災にもつながっていることを理解する。
・防災教育を中心に環境教育・世界遺産学習・人権教育・キャリア教育などがESDの教育理念により、連続性を持った取組となるようにこれまでの教育活動を地域との協働に基づき再構築する。
活動のねらい
・ESDの教育理念に基づく教育活動として、防災教育を通して、命の大切さを学び、進んで地域に貢献しようとする意欲を高め、『自ら学び考え、高め合う子』を育成する。このことによって、変化の激しい時代に生きる子どもたちは、将来にわたって役立つ力を身につける。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
 万が一の災害時に本校は地域の避難所となる。避難された地域住民の方は、学校のどこに何があるかなど、学校のことをあまり存じてない方も多くいらっしゃると予想さる。そこで、学校のことを一番知っているのは、児童ではないかという点に着目し、避難所が開設されたとき、児童が支援される側ではなく、支援する側になることで避難所の運営がよりスムーズにできるのではないだろうかという仮説を立て、この仮説に基づき、コミュニティ・スクールとして、地域自主防災・防犯協議会の方々と協働し、平成29年度から防災教育に取り組みこととなった。
 校長を中心に教員が避難所開設訓練の計画・実施に関わると共に、具体的に支援者のニーズに応じた避難場所をどのように提供するかを事前協議し、地域との協働の第一歩とした。これらの活動の中で、コミュニティ・スクール学校運営協議会での議論を経て、高学年の児童に避難所キッズスタッフとして一定の役割を果たすことを自覚できるように防災教育を推進することの重要性を地域・保護者・学校のそれぞれの代表者の間で確認することができた。
 地域自主防災・防犯協議会の方をゲスト・ティーチャーとしてお迎えし、減災・防災意識の大切さについて教えていただくとともに、4年生では、地震時にまず自らの身を守る行動をとることの大切さを「ダンゴムシのポーズ」を中心に防災士の指導により学習した。
 5年生では、避難所開設時に児童が支援される側ではなく、支援する側に立つことにより、大人たちは本当に支援を必要としている人への支援により力を入れることが可能となること、また災害により被害により心の元気をなくしている方にとっては児童が、キッズスタッフとして活動している姿が励みとなることなどを子どもたちは学びとった。キッズスタッフとして、お手伝いバンダナに支援できる内容を考えるという学習では、まず一人一人が自らできること・したいことを考え、そのあと4人グループでどのような意見が出たかを交流し、最終的に自分ができる支援をバンダナにはった養生テープに書き込んだ。
このお手伝いバンダナは、連合自治会が避難所用品として自治会予算で購入してくださり、学校が預からせていただいている。児童は、お手伝いバンダナをまくことによって避難所キッズスタッフとして活動することを具体的にイメージできた。また、クロスロードゲームを取り入れ、実際の避難所で起きると思われる様々な問題について、2つの判断すべき事例(「ペットの犬をつれてきた避難者を受け入れるかどうか。」「避難者が200人いるがおにぎりが100個しか届かなかった。おにぎりを配るべきか。」)について班ごとに判断し、その理由を考えた。
 また、教員研修会で学んだ成果をもとに「登下校時に大地震が発生したときに、登校班のみんなをどこに誘導するか。」を考え、校区の避難先を地図に記す学習をおこなった。このことにより、大地震の発生時の対応を自分事として、高学年の責任として避難行動がとれるように意識を高めることにした。
 6年生では、昨年度の避難所キッズスタッフの学習を基盤として、実際に災害弱者となる「車いす利用者」「視覚障碍者」「高齢者」の支援の具体策を考えるために、「車いす体験」「アイマスク体験」「高齢者の身体模擬体験」を通して支援される側の感覚を体験した。その学習を基盤に助成金で購入させていただいた防災ヘルメットをかぶり、たてわり班の班長として下級生の安全避難誘導、安全確認をどのように行うかをシミュレーションした。また防災ヘルメットをかぶりながら、クロスロードゲームを行うことでよりリアルに避難所での的確な判断の必要性とともにもしもの時に実際に避難所を運営されている大人の活動を理解し協力できる力をみにつけられるように指導した。
 これらの取組をホームページやPTA学級懇談会、コミュニティ・スクール学校運営協議会、連合自治会定例会などを通して積極的に発信してきた。

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。   昨年度まで(助成金・研修受講前)と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
 海がない奈良県、これまで大きな自信を経験したことがない奈良県に住んでいるため、大人も子どもも震災のことについてはどことなく他人事のような感覚が実際にあった。9月の研修会に参加した教員が現地で学んできた報告を受け、改めて平時からの備えが大切であることがわかるとともに、いかにして自分事として捉えることができるように指導するかが課題であることが浮かび上がった。
 そこで、「大切なものを守る」というキーワードをもとに、「大切な自分・家族・友達を守る」「高学年として、たてわり班のメンバー・登校班のメンバーを守る」「避難所キッズスタッフとして地域の方を守る」という3つのテーマに基づき本校の減災教育を推進することにした。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
・クロスロードゲームの導入
・これまで5年生と6年生にだけにおこなっていた地区自主防災・防犯協議会との協働による防災士からの減災教育を4年生にもおこなうことができた。
・通学路避難先マップを完成させることができた。
・本校の減災教育の取組を保護者・地域に発信することができた。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
・座学だけでなく、体験的活動を通して、減災・防災について自分のごととしてより深く学習することができた。
・地域との協働を通して、学校の教育活動への理解が進み、より積極的に参画していただいた結果、同時に子どもたちにとっては自分たちをこれだけたくさんの地域の大人が見守ってくださっているとの理解が深まった。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
・子どもたちが、積極的に減災・防災について取り組み、その成果を発信することによって、地保護者や地域全体の減災・防災意識が高まった。
・地域と共に新しい教育活動に取り組むことで、コミュニティ・スクールとしての役割が明確となり、地域とともにある学校づくりをより推進することができ、地区自主防災・防犯協議会との協働がより効果的な、ものとなった。
・教員自身も大地震での対応について自分事して捉え、命を守るために日ごろからどのように指導すべきかを考えるようになった。

4)実践から得られた教訓や課題と次年度以降の実践の改善に向けた方策や展望
・連合自治会主催に避難所開設訓練への保護者・児童の参加率をどのように上げるか。
・学校だけでなく地域ぐるみの減災教育をコミュニティ・学校スクールとしてどのように構築していくか。

 

活動内容写真

  • 落下物について学ぶ

  • ブルーシートを津波に見立ててイメージする

  • 避難所キッズスタッフのバンダナ

  • 車いす体験~マットをぬかるみと想定

  • アイマスク体験~食事を摂る疑似体験

  • 助成金で購入した防災ヘルメットをかぶりクロスロードゲームを行う

活動において工夫した点

・クロスロードゲームの導入
・これまで5年生と6年生にだけにおこなっていた地区自主防災・防犯協議会との協働による減災教育を4年生にもおこなう。
・通学路避難先マップの完成

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