過疎地域における災害時の高齢者の避難の在り方を考える

広島県立瀬戸田高等学校

活動に参加した児童生徒数/1~3学年58人
活動に携わった教員数/14人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/720人

実践期間2017年7月1日~2018年3月31日

活動のねらい

学校所在地の生口島は,南海トラフ巨大地震の被害が想定されると同時に住民の42%が高齢者であるため,全住民の安全な避難が課題とされる地域である。本校ではこれまで,独自の部活動である「しまおこし事業部」を中心に,地域における介護の問題に取り組んできたが,今年度,自らの減災(防災)意識と行動力を高めるとともに,地域における減災(防災)に貢献することを目的に,災害時における地域住民の避難に関する課題の解決に資する活動を中心とする「瀬戸田高校減災プロジェクト」を実施してきた。

活動内容

1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
7月 東日本大震災被災地視察希望者応募,視察先連携・視察計画
8月 自然災害に対する事前学習,東日本大震災被災地視察(仙台市,石巻市,女川町 生徒2名)
9月 「逃げ地図」に関する学習(日本建築学会参加),東日本大震災被災地視察校内報告会
10月 視察報告・逃げ地図制作ワークショップ①(地域住民・医療介護施設関係者・消防署職員参加)
11月 津波を想定した校内避難訓練,東日本大震災被災地視察校内報告会,ボランティア関係団体等での生徒交流
12月 共創力で進む東北プロジェクト参加,ボランティア関係団体等での生徒交流
    地域の小学校児童・保護者対象に活動報告,尾道市長・広島県教育委員会教育長に活動報告
1月 視察報告・逃げ地図制作ワークショップ②(瀬戸内海島嶼部高校生合同研修会 広島・愛媛県5校)
   瀬戸田市民会館において,高校生,小中学生,行政,地域住民等に活動報告
3月 「共創力で進む東北プロジェクト」から生まれた10プロジェクト交流会(東京)に招待参加

2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
  昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
研修会で見学した学校の児童生徒の主体的な学習から,減災意識だけでなく,課題発見解決力や表現力,他者と協働する力,社会貢献への意欲などが育成されていることがわかり,本校の減災プロジェクトにおいても,生徒自身が考え,議論し,活動し,事後の自己評価をするということを貫き通すことができた。
プロジェクトにおいては,実際の被災状況や被災された方の体験を踏まえることが欠かせなかったが,助成金の全額を生徒の東日本大震災被災地視察の旅費の一部に充てることで,生徒の視察派遣が可能となった。

3)実践の成果
減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
本校における防災教育の内容を見直し,改善する糸口となった。従来までの防災教育は,校内での火災を想定した校舎内から校舎外への避難と消火訓練が中心の内容で,しかも教員がすべてを仕切るものであった。今年度は,「減災プロジェクト」により,地震,津波,土砂災害などを内容に盛り込むことができた。また,生徒の発表の場を設定したことで,減災(防災)を自らの課題としてとらえるきっかけを作ることができた。ただし,本校での減災(防災)教育をどのように進めていくかとの職員間の共通認識を持つには至っていない。

児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
計画当初,生徒及び地域に期待する活動の成果として,(1)減災(防災)意識と行動力の向上(生徒・地域),(2)減災(防災)ツールの素材の蓄積(生徒・地域),(3)思考力・判断力・表現力の向上(生徒),(4)地域内及び医療介護施設間の交流の活発化(地域)をあげていた。(1)(3)について,「減災プロジェクト」に取り組んだ生徒は,地域における危険個所や避難の方法を主体的に考え,地域住民等とのワークショップなどを経験する中で,減災(防災)意識を高めるとともに,企画力,対話力,行動力,貢献意欲などを身に付けてきた。さらに,「共創力で進む東北プロジェクト」など他団体が主催する催しにおいても,主体的な参加態度を示し,参加者から大きな評価と期待を得て,東京で開催される交流会に招待された。(2)について,「逃げ地図」づくりに取り組む中で,危険個所・避難場所の確認,避難経路の検討などを具体的に行う手法を理解し,それを伝える力を身に付けた。本校生徒全体については,減災を他人事ととらえないで取り組む「減災プロジェクト」を知ることを通して自らも減災の担い手であることを自覚するきっかけを得ることとなっている。

教師や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
②の(1)(2)(4)について,地域住民及び医療介護施設関係者を対象とした「逃げ地図」づくりワークショップを通して,減災(防災)の観点から地域の状況を知っておくことの大切さ,住民同士,住民と地域の施設とのコミュニケーションの重要性などを認識していただくきっかけとなった。また,「逃げ地図」の手法を知っていただく機会となった。島嶼部高校生合同研修会でのワークショップは,地域貢献活動に取り組む他校の生徒に,減災の観点からの地域貢献を提案し,取組のひろがりを作り出すこととなった。
本校職員に,今後の防災(減災)教育の在り方を考える糸口を示すものとなったが,共通認識は今後の課題。
「減災プロジェクト」をはじめとする地域貢献活動が評価され,しまおこし事業部が,青少年のボランティア活動の文部科学大臣賞を受賞した。また,「減災プロジェクト」を含む本校の学習活動が持続可能な地域社会づくりに貢献しているとして,広島県ユネスコESD大賞を受賞した。

4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
高校生から地域へ発信することが,地域から高く評価され,生徒にとって大きな自信となった。地域への発信とともに,校内での減災(防災)教育を充実させ,全生徒の減災(防災)意識を一層育むことが課題。

 

活動内容写真

  • 地域公民館での「逃げ地図」ワークショップ

  • 小学校で児童・保護者に「減災プロジェクト」を説明

  • 瀬戸内海島嶼部高校生合同研修会のフィールドワーク

  • 共創力で進む東北プロジェクト参加

活動において工夫した点

持続可能な地域社会づくり,地域貢献ということを土台に据えて継続的に活動してきた点。

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