地域との連携・協働を重視したタイムライン(学校防災行動計画)の作成と避難や防災に対する意識を高めるための取り組み
-特別支援学校における防災計画と防災教育のあり方-
長野県上田養護学校
活動に参加した児童生徒数/小学部・中学部・高等部217人
活動に携わった教員数/158人
活動に参加した地域住民・保護者等の人数/250人
実践期間2020年4月1日~2021年3月31日
活動のねらい
本校は、上田市の東部、東御市に近い地域にある知的障がい特別支援学校である。児童生徒は、小学部・中学部・高等部・重度重複障がい学級・訪問教育部 計217名である。校舎のすぐ横には、冬、白鳥が飛来する千曲川が流れ、その土手では小中学部児童生徒が散歩をしたり、高等部の生徒は毎日の日課の中でマラソンを行ったりして、学校生活を行っている。しかしながら、この自然豊かな千曲川が、時には牙をむき、令和元年度10月台風19号の際には、すぐ近くで越水が見られ、主要道路が台風によって流されるという災害が起こった。つまり、立地条件的に早い段階での避難が最大の課題であり、今年度は、タイムライン(学校防災行動計画)を作成し、引き渡し訓練を実施した。
また、特別支援学校における防災教育を計画するだけでなく、認知発達に応じた防災教育のあり方を地域・学校・保護者と共に、連携と協働に視点を置きながら取り組むためにはどのようにしたら良いのかということを含め、学校防災安全係チームで検討し、活動を展開してきた。
活動内容
1)実践内容・実践の流れ・スケジュール
①令和元年12月 タイムライン作成会議
②令和2年4月~ タイムライン作成と周知・第2次避難場所の変更と連絡
③令和2年7月 タイムラインに従った引き渡し訓練の実施(生徒の安心安全を第一に考えた早めの避難)
④令和2年9月~ 避難訓練を行い、その前後で防災教育授業の実践
⑤令和2年10月 変更となった第2次避難所までのルート確認
⑥令和2年10月~ 防災ポーチ作り研修(計6回)
⑦令和2年12月~ 来年度訓練計画案の作成と機能的な安全点検のための仕組み作り
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
助成金を受けることが可能になり、来年度の引き渡し訓練は、購入させていただいたトランシーバーを利用した訓練が実践可能となり、来年度の引き渡し訓練の計画案を修正することができた。また、防災意識を高めるきっかけとして、念願だった防災ポーチ研修を地域、保護者、教員を対象に計6回開催することができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
下記のアンケート結果から、一人一人が防災に対する意識を高めることができたように感じる。具体的には、教室環境の整備のために整理整頓を心がけところから始めるという視点で、防災・減災教育活動のスタートを切ることができたように感じる。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
訓練の事前学習として、認知発達に合わせ、シンボルを用いた視覚支援教材を作成し、提示したことで自閉スペクトラム症等を含めた児童生徒が不安定になることが少なくなった。また、「ダンゴムシ」のポーズを見せ、事前学習をしておいたことで、9月に行われた避難訓練ではできなかった机の下に隠れるという行動が、11月の緊急地震速報対応訓練ではできるようになった児童生徒も見られた。これらの点から児童生徒自身の自助力の育成につながったのではないかと考える。
③教員や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校は、広いスペースをパーテーションで仕切るような可動式の壁が多く、収納が少ないという教室環境の元、地震に対する備えとしての、教室環境整備が課題であったが、避難訓練や緊急地震速報対応訓練の事前確認を通して教室環境における意識づけを少しずつ取り組むことができ始め、少しずつ固定等を始めたので、先生方の意識の変化も感じることができた。以下は、訓練後にとった教員の意識調査の結果である。
グラフ左:教員の避難訓練における意識調査 ③落下の恐れのあるもの
グラフ右:教員の避難訓練における意識調査 ⑲防災意識の高まり
参考資料 今年度実施した活動の様子
写真左から①~⑤
①「2019年 タイムライン作成会議」 ②「2020 防災ポーチ研修会」 ③「研修 防災ポーチに入れたい中身」
④「避難経路図」 ⑤「訓練前の視覚支援教材 引き渡し訓練」
4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
今年度の実践では、タイムライン(学校防災行動計画)の作成によって、いつ どこで 誰が 何をするべきかということが明確になったので、教職員、保護者、地域の方々との共通理解のもとに連携・協働ができ始めたように感じる。現状、知的障がいのある特別支援学校では、防災教育に対して様々な課題から積極的に取り組めていない傾向もみられる。しかしながら、災害大国である日本で暮らしていくためには、災害が起こった時にどうすれば自分の身を守ることができるのかを身に着けること(自助力)が、自分の命を守ることに繋がると感じる。今年度から始めたシンボルや写真を用いた視覚支援教材と絵カードコミュニュケーションによって、認知発達に合わせた防災教育が進められ、知的障害のある自閉スペクトラム症を含めた児童生徒がパニックになることが減ったという報告も見られた。今後も児童生徒の実態、認知発達に合わせた防災教育の推進をはかりたいと考える。また、災害時命の危険が伴う重症児者の防災の視点から、発電機などを関係者で検討し、準備していくことも必要であると考える。
5)その他
今後、防災減災に関わる教育は、SDGSをイメージして作られていくと考える。私は、SDGS踏まえながら、最も重要であると考えるのが認知発達に応じた視点と自助力の育成であると考える。どうすればより児童生徒にわかりやすい活動の内容になるのかその点を明確化して、授業やカリキュラムの作成を行うことが重要であると考える。
①令和元年12月 タイムライン作成会議
②令和2年4月~ タイムライン作成と周知・第2次避難場所の変更と連絡
③令和2年7月 タイムラインに従った引き渡し訓練の実施(生徒の安心安全を第一に考えた早めの避難)
④令和2年9月~ 避難訓練を行い、その前後で防災教育授業の実践
⑤令和2年10月 変更となった第2次避難所までのルート確認
⑥令和2年10月~ 防災ポーチ作り研修(計6回)
⑦令和2年12月~ 来年度訓練計画案の作成と機能的な安全点検のための仕組み作り
2)9月研修会の学びの中から自校の実践に活かしたこと。研修会を受けての自校の活動の変更・改善点。
昨年度まで(助成金を受ける前)の実践と今年度の実践で変わった点。助成金の活用で可能になったこと。
助成金を受けることが可能になり、来年度の引き渡し訓練は、購入させていただいたトランシーバーを利用した訓練が実践可能となり、来年度の引き渡し訓練の計画案を修正することができた。また、防災意識を高めるきっかけとして、念願だった防災ポーチ研修を地域、保護者、教員を対象に計6回開催することができた。
3)実践の成果
①減災(防災)教育活動・プログラムの改善の視点から
下記のアンケート結果から、一人一人が防災に対する意識を高めることができたように感じる。具体的には、教室環境の整備のために整理整頓を心がけところから始めるという視点で、防災・減災教育活動のスタートを切ることができたように感じる。
②児童生徒にとって具体的にどのような学び(変容)があり、どのような力(資質・能力・態度)を身につけたか。
訓練の事前学習として、認知発達に合わせ、シンボルを用いた視覚支援教材を作成し、提示したことで自閉スペクトラム症等を含めた児童生徒が不安定になることが少なくなった。また、「ダンゴムシ」のポーズを見せ、事前学習をしておいたことで、9月に行われた避難訓練ではできなかった机の下に隠れるという行動が、11月の緊急地震速報対応訓練ではできるようになった児童生徒も見られた。これらの点から児童生徒自身の自助力の育成につながったのではないかと考える。
③教員や保護者、地域、関係機関等(児童生徒以外)の視点から
本校は、広いスペースをパーテーションで仕切るような可動式の壁が多く、収納が少ないという教室環境の元、地震に対する備えとしての、教室環境整備が課題であったが、避難訓練や緊急地震速報対応訓練の事前確認を通して教室環境における意識づけを少しずつ取り組むことができ始め、少しずつ固定等を始めたので、先生方の意識の変化も感じることができた。以下は、訓練後にとった教員の意識調査の結果である。
グラフ左:教員の避難訓練における意識調査 ③落下の恐れのあるもの
グラフ右:教員の避難訓練における意識調査 ⑲防災意識の高まり
参考資料 今年度実施した活動の様子
写真左から①~⑤
①「2019年 タイムライン作成会議」 ②「2020 防災ポーチ研修会」 ③「研修 防災ポーチに入れたい中身」
④「避難経路図」 ⑤「訓練前の視覚支援教材 引き渡し訓練」
4)実践から得られた教訓や課題と今後の改善に向けた方策や展望
今年度の実践では、タイムライン(学校防災行動計画)の作成によって、いつ どこで 誰が 何をするべきかということが明確になったので、教職員、保護者、地域の方々との共通理解のもとに連携・協働ができ始めたように感じる。現状、知的障がいのある特別支援学校では、防災教育に対して様々な課題から積極的に取り組めていない傾向もみられる。しかしながら、災害大国である日本で暮らしていくためには、災害が起こった時にどうすれば自分の身を守ることができるのかを身に着けること(自助力)が、自分の命を守ることに繋がると感じる。今年度から始めたシンボルや写真を用いた視覚支援教材と絵カードコミュニュケーションによって、認知発達に合わせた防災教育が進められ、知的障害のある自閉スペクトラム症を含めた児童生徒がパニックになることが減ったという報告も見られた。今後も児童生徒の実態、認知発達に合わせた防災教育の推進をはかりたいと考える。また、災害時命の危険が伴う重症児者の防災の視点から、発電機などを関係者で検討し、準備していくことも必要であると考える。
5)その他
今後、防災減災に関わる教育は、SDGSをイメージして作られていくと考える。私は、SDGS踏まえながら、最も重要であると考えるのが認知発達に応じた視点と自助力の育成であると考える。どうすればより児童生徒にわかりやすい活動の内容になるのかその点を明確化して、授業やカリキュラムの作成を行うことが重要であると考える。
活動内容写真
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活動において工夫した点
以下の5点を踏まえ、校内(先生方)や校外と(保護者、事業所、地域、消防団、市役所、公民館、危機管理課、千曲川河川事務所等)との連携ができ、共助の視点から連携と協働がはかることができたのではないかと考える。
①タイムライン(学校防災行動計画)作成の際には、タイムライン作成会議を実施し、学校防災アドバイザーの大学の先生方や千曲川河川事務所の方々、行政の危機管理課の方、地域の方々、保護者の意見をブレーンストーミングで出していただく形で、アドバイスを聞き、その上で作成した。
②タイムラインの周知、協力の際には、防災安全主任と本校の校長、もしくは教頭が同行し、お願いする形で地域の方々に広めた。また、タイムラインにそった引き渡し訓練でも、消防団の方々と一緒に活動できた。
③2次待機場所(2次避難場所)の変更については、保護者の方にルートを確認していただくための機会を設け、本校職員がルートのポイントに立ち、道案内を行った。保護者からは、「新設した公民館でカーナビに場所が反映されなかったので、道案内をやってもらいありがたかった」という報告を得ることができた。
④生徒に防災意識を伝えるのは、まずは、教員であり、保護者であると考え、今年度頂いた助成金を使って防災ポーチ作り研修を地域、保護者、先生方向けに実践した。来年度は、生徒向けの授業を実践予定。
⑤訓練の前に学習教材として、認知発達に合わせた児童生徒向けの視覚支援教材を係で作成し、提供した。また、避難経路図も写真を使った視覚支援教材を紹介し、活用してもらった。
資料ダウンロード
資料なし