新年のご挨拶
~新年おめでとうございます 会長 佐藤 美智子~
鎌倉ユネスコ協会は平山郁夫画伯を会長に1988年スタートして27年が経ちました。昨年は平山画伯の七回忌を前にして、10月12日に平山美知子夫人と令嬢弥生様もご同乗のバスツアーで八ヶ岳にある平山郁夫シルクロード美術館を訪問。素晴らしい好天に恵まれ、美術館ばかりでなく、先生が富士山をお描きになった場所にも立って先生をお偲びすることが出来、有意義な一日となりました。帰りには美術館から一人ひとりにお土産まで戴き恐縮いたしました。
11月2日には東京ドームホテルで“平山画伯を偲ぶ会”が催され、私も大勢の列に連なって、にこやかな先生のセーター姿のお写真を拝し乍ら献花をさせて頂きました。
その折青柳正規文化庁長官のご挨拶で、先生の日本画家としての卓越した業績と、世界の文化財保護の為に私財を擲って盡れたご功績などが縷々述べられ、改めて先生の偉大な足跡をお偲びしたのですが、この鎌倉ユネスコは先生が初代会長として関っていて下さった事を大変誇らしく感じました。
先生敬慕の念で集まった会員が多い鎌ユだけに、昨年も理事長以下会員の皆様が心を合わせて活躍してくださいました。世界遺産保護や世界寺子屋運動のためのバザーや絵はがき販売、また国際交流の催しやESD、平和の鐘等々それぞれの分野で地道な活動をなさっていらっしゃる会員のお姿を拝見するたびに頭の下がる思いでおります。
昨年11月14日にはペルー大使館で、ペルーのクントゥル・ワシ博物館への寄付に対して感謝状をいただくことが出来、ささやかながらもこのように喜ばれるのかと逆に感激。会員の奥山ご夫妻の陰のご尽力があっての事と感謝いたしました。有能で優秀な会員の多い鎌倉ユネスコですが、本年もまた皆様のお力を結集して平山先生のご遺志をつないで頂きたいものと、年頭にあたって念願する次第でございます。
~UNESCO創設70周年を越えて-潮目は変わった! 理事長 石田 喬也~
会員の皆様は新年の幕明けをいかがお迎えでしょうか。まずは、UNESCOが昨年11月に、東西冷戦の危機をも乗り越えて創設70周年を迎えたことを共に喜びたいと思います。
しかし、その間に9.11米国同時多発テロとそれを想起させる昨年11月13日のパリ同時テロを始めとして、冷戦後も世界の諸地域ではテロや戦争、紛争が絶えることがなく、今この時も多くの人が死傷し、またおびただしい数の難民が生まれている悲惨な状況が続いている現実に向き合うならば、「平和な世界の実現を目指してきたUNESCOの70年は何であったのか?」が問われてしかるべきでしょう。UNESCOの存在を「国連の良心」と呼ぶ褒め言葉は、強烈に自己主張をし合う国際政治力学の現実を前にしては無力であることへの慰めの言葉と言えるかもしれない。
ところが、70年を耐え抜いた今、潮目が大きく変わってきたのです。そもそも、UNESCOがモットーとしてきた「人の心の中に平和の砦を築こう」で目指す平和は、ノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士の提唱に沿って言えば、戦争がないだけの「消極的平和」ではなく、貧困、抑圧、差別などもなく、また良い環境に恵まれた、地球上のすべての人がハッピーに共存できる「積極的平和」を意味しています。国連における昨年まで15年間の「ミレニアム開発目標(MDGs)」は主に開発途上国の貧困の削減などを目指すものでした。それに対し先進国も対象にして、今年から2030年の国際目標として昨年9月25日の国連総会で採択された、貧困や環境などの17の目標と169項目の具体的な達成基準が盛り込まれた「持続可能な開発目標(SDGs) 」は、まさにこの「積極的平和」の実現に向けてのグローバル協調の記念すべき第一歩となるものであるからです。このような合意が193の加盟国による全会一致でなされたことは、国家エゴがぶつかり合ってきた国連においては、画期的な前進であると言えます。
一方で、UNESCOでは「持続可能な開発のための教育(ESD) 」に対して、一昨年11月に、それまで10年に渡る世界各国におけるESDに対する取組みを総括することを目的として、「ESDに関するユネスコ世界会議」が岡山と名古屋で開催され、「ESDに関するグローバルアクションプログラム(GAP)」が採択されて、世界各国でESDをいよいよ本格的に取組むことが合意されました。すなわち、国連としてはSDGsの全体、 UNESCOはそれを教育の面から支えるESDという一対が大きなうねりになってきたのです。
かくして、UNESCOの「平和の砦」の理念に共鳴して民間ユネスコ運動を展開してきたユネスコ協会の会員としては、まず「積極的平和」に向けての一人ひとりの行動指針としての「わたしの平和宣言」(「MANIFESTO2000」:P12参照) への賛同の輪を広げることに努めましょう。そして国連におけるSDGsの進展をよく注視しつつ、日々の活動としてはESDに今後一層注力することを、年頭にあたり提案して新年のご挨拶とさせていただきます。