ペルー便り
~願いだらけの欲張りなお正月~
凛とした静けさの中、遠くからボーンと鐘の音が聞こえてくる日本のお正月。ペルーでこの静寂を味わうことは不可能に近い。南半球の暑いお正月は、リズムカルな音楽とともに大晦日のパーティー準備から始まる。特に都会に住んでいるペルー人は正月間際にあるものを購入する。それは新年に懸ける願いに必要な縁起物だ。
今年やり残したことや来年実施したいことを実現させるためには、新年スタート時に様々な儀式を行わなければならない。例えば、「旅をする年にしたい」と決意した人は旅用のリュックやトランクを持って家の周りを一周する。「お金を貯める年にしたい」人は レンズ豆を自分の財布に入れる。「幸運な年にしたい」人は黄色いものを身につける。黄色グッズの定番は下着パンツやプラスチックでできた伊達メガネ。「数々の願いを叶えたい」人は12時を知らせる12回の鐘の音が響くたびにブドウを1個ずつ食べ、その都度願いを込める。「幸運を招く」ためにはコインを12枚用意し、正月が明けたら家の中から窓の外へ向けて投げる(投げた後はもったいないのでコインを回収しに行く)。
「旧年の苦い思いを忘れたい」場合は道のド真ん中に古着を着せた案山子を置き、忘れたいことを書いた紙を貼りつけ、案山子ごと全部燃やす。
これらの風習がどこから来たのか、ペルー人に聞いても明確な答えは返ってこない。ただいくつか考えられるのは、黄色は太陽を表わし昔ながらのペルー文化と連携、 ブドウを食べたりコインを投げたりする風習はスペインから、物を燃やすのはペルー由来と言われている。
願いが多ければ多いほど正月を迎えるのは大忙し。欲張りなペルー人は全部実行しようとする。正月を迎えた時にはヘトヘト状態。その後、近所の人に挨拶し、親戚や仲間と踊って笑って正月を過ごす。日本の皆さんにとっても希望と笑いの溢れた年となりますように。(太田さやか)