スポットライト
~原発事故避難生徒達へのいじめ~
NHKの人気番組「ダーウィンが来た」(7月9日)は「大都会のカワウソ家族の驚き!ビル街で子育て!」を放映した。シンガポールの国中いたる所の河川で、カワウソが野生化している光景を見た。シンガポールは1965年の建国以来、水を最重要資源と位置づけ、降雨水全量を使用可能にする為の施策を構築してきた。その為に養豚を含む農業をやめた。カワウソが都市国家の河川で子育てする姿を見て、私はシンガポールは水についての最終目標を達成した事を直感した。
この国は教育にも建国当初より最大の力を入れている。私が滞在していた時期(1987年-1996年)学校教育の現場には教員免許をもつ警察官が勤務していた。次の世代を担う子供達を社会悪(暴力・金銭・麻薬など)から守り、勉学修業に集中できるようにする為である。教育が崩れたら、国は成り立たなくなる事を真剣に考えての事である。いじめ対策も勿論行なわれた。子供達だけで社会悪に対処する事は不可能である。家庭・地域の力でも無理である。学校当局は、教育という本来の目的に専念すべきである。国が警察官教師を養成して対処したやり方は、どこの国でも出来る事ではない。しかし、そこまでやらねばならぬという認識を持つか持たぬかは重要である。
東日本大震災による東京電力福島第一原発事故で、多くの住民が避難した。自主避難した家族の子供達が避難先で「放射能バイキン」扱いのいじめにあった。「賠償金があるだろう」と多額の金銭をおどし取られた横浜市の事例は大きく報道された。5年間も放置されたあとである。この男子生徒の手記が悲痛である。「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」。
「原発事故子ども・被災者支援法」という法律がある。2012年6月に民主党政権下の国会で全党派一致で成立した法律です。しかし、「予算も付かず、実施細則も策定されず、たな晒しのままです。2013年6月28日いわき市議会は、全会派一致で意見書を安倍首相以下担当大臣に提出しました」と、いわき市で発行されている「日々の新聞」2013年7月15日号に地元の眼科クリニックが意見広告をだした。
国会では福島復興再生特別措置法を改正する動きはある。福島から避難した子供達へのいじめについては国が防止策を講じることが明記されているとのこと。
2017年4月4日、今村復興大臣が原発事故の自主避難者について「本人の責任と判断」「裁判でも何でもやればいい」と、発言し、強い非難をあびた。毎日新聞の社説は「今村氏の発言は政権全体の原発事故軽視姿勢の表れでもある」と断じた。大臣はその後「震災が東北で良かった」と失言し辞任した。
斎藤美代子さんが主宰する「未来・連福プロジェクト」は、活動の大きな柱として、「東北大震災により放射能で苦しむ子供達の為の支援活動」”東北の子供達を鎌倉にご招待!建長寺で会いましょう“を実施しており、今年で7年目になる。2012年浪江町、2013年飯館村、2014年3月大熊町、同8月川俣町、2015年南相馬市、2016年双葉町、2017年葛尾村・川内村とつづいている。斎藤さんのことばが今年3月11日毎日新聞に載っております。「感謝と笑顔が交わされるところには、現代社会が失いつつある、人間としての純粋な喜びがあふれています。すてきな時間、共に」。
斎藤さんにご紹介して頂いた松尾ひろみさん、尾畑まゆみさんは、鎌倉・逗子・葉山に避難している家族と「連福」(“つなごう福島”)しておられます。お二人から、お聞きしたことを記します。
「福島からの避難児童へのいじめは次の年(2012年)から起きていました。私達は4年前から活動していますが、いじめの事を知るには少し時間を要しました。」
「子供達の母親は放射能のことを学ぶべきです。うつるとか、さわったら駄目とかいう事は無いという程度の事すら、子供によくいってきかせられないというのでは駄目です」
「いじめがある事を知った時、私達はもっと声をあげるべきだった」。
シンガポールはイスラムの国、マレーシアとインドネシアに隣接する小国です。日本からも政治家行政官が訪問していますが、その多くはカジノ運営ノウハウの取得が目的のようです。この国は「水」と「教育」のほかにも医業立国、華人・華僑経済圏の拡充(カジノはその1部)など学ぶべきものが多くある。 (渡部研自)