ハーイ、こんにちは
~(株)豊島屋社長 久保田 雅彦さん~
鎌倉を代表するお菓子の老舗(株)豊 島屋さんの社長久保田雅彦氏を若宮大 路沿いに在る本店にお訪ねした。
二階 には鳩のコレクションの他に、往年の 文化人の色紙や掛け軸が展示されてい て、親交の深さがうかがえた。
三代目 当主で、鎌倉商工会議所会頭も務める 久保田さんは生粋の鎌倉っ子。本誌へ の広告掲載にご協力頂いている。
鳩サブレーのこと商品開発のこと
豊島屋を語る時に鳩サブレーは欠か せない。初代が、味は外国の方からい ただいたビスケットから、形と名前は 鎌倉八幡宮の鳩からヒントを得て作っ たもの。「長い間愛されている理由は 当時外国で使われていたであろうエッ センスなどは使わず、小麦粉、卵、バ ター、砂糖のみで作った事。和の心を 大切にした事だと思います」。
お店に は他にも鎌倉らしい上品なお菓子が並ぶ。「豊島屋のお菓子は全国区ではなく地方区鎌倉のお菓子です。鎌倉を語れるお菓子作りをしてきました」と。鎌倉店の紙袋にのみ“相州鎌倉”の文字がある。鎌倉で買った証である。
初代の教え
1 美術・骨董品を買ってはいけない。小金ができたからといって驕り高ぶってはいけない。
2 枝葉を枯らしても本木を枯らすな。本業はお菓子。多角経営はいけない。「名前は株式会社ですが、“家業”の言葉をいつも心に留めています」と語られた。
趣味は日本料理
> NHKの料理番組に出演なさった由。自前の包丁は6・7本。器は十客分を揃え、「日本料理でおもてなしをよくします。買い物も仕込みも全部自分でします」とさりげなくおっしゃる。そして話は料理からお菓子へ。「京都のお懐石料理に触れ、その盛り付け、お野菜のあしらい、素材のお味を大切にする心に感心しました。これらはお菓子作りに通じます。ただしカメラにたとえれば、京都に野暮というフィルターをかけて撮ったのが鎌倉。そこの違いをお菓子にするのが豊島屋です」。鎌倉に期待すること
「もっとグレードアップした町、人々が心豊かに暮らす町になってほしい」幾多の文士や芸術家が集い、しゃれた身ずくろいの人々が散策する文化的でハイカラな町鎌倉―これは明治以降の先輩達が、情熱を持って築いてくれたもの。この風情が消えていくことを久保田さんは憂う。失われつつある鎌倉本来の姿を取り戻したいと日々尽力しておられる。鎌倉を思うお話は尽きなかった。 (文・関根 写真・鴇澤)