Spot Light「海と原発」

水に流してすむことではない

参院選後 東京電力福島第一原発からの海洋への放射性汚染水流出の深刻な事態が連日報道された。
「事故は収束していない」とテレビも新聞も言明。東電幹部は「絶対に流失していないとは言えない。事故から2年が経過するが、今も心配をかけ、お詫びする」と謝罪。謝罪だけで済むことではない。水に流してすむことではない。東日本の水産業は存亡の危機にある。

事故直後 この事態を予測し具体的な対策を提案した人物がいる。テレビ朝日「そもそも総研」のキャスター玉川徹氏がいつも教えを乞うている小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)です。提案概要①メルトダウンした核燃料に地下水が接触せぬようにする為、原子炉建屋全体の周囲地下に遮水壁を設置する。②建屋下から汲み上げた高濃度汚染水は専用タンカーで東電柏崎刈羽原発に運び、ここの放射性物質除去施設で処理する。

東電の対策概要 ①海に至近の場所の地中だけに、ガラス固化剤注入し土の壁を造った。地下水はこの壁を乗り越えて海に流出。山側からの地下水は建屋前に井戸(12ケ所)を掘り汲み上げるとした。更に、2015年に凍土工法で地中遮水壁を完成させ建屋地下への地下水流入を防ぐ。②汚染水から放射性物質を除去するため当初設置された米国製施設は、今年3月に日本製のALPS(放射性三重水素以外の62種の核種を除去できる)に取って代えられたが、6月以降トラブルで停止中。高濃度汚染水を貯蔵する地下貯水槽は水漏れで使用不可になり、地上タンクも一部水漏れで対策中。

東電は新潟県の柏崎刈羽原発の廃液処理装置を福島第一原発からの高濃度汚染水処理に使用する決断はしないと思う。そうであれば、国際的な判断で、事故の後始末と廃炉のための国際組織が造られるのは必至と思う。「国際廃炉研究開発機構」は発足している。福島の被災地は陸も海も廃炉技術を構築する為の場所になってしまうのか?東電は福島県の漁脇と地下水海洋投棄の了解を取るための説得を繰り返した。いわき市で発行されている「日々の新聞」6月18日号は、漁業者の意見を報じている。「福島の漁業者がこの問題の可否を決定することは良くないと思う。地下水から万一放射性物質が出た時に、福島の漁業者がよいといったと、外交問題にまで発展したら、どうやって責任を取ればいいのか・・・この問題は多くの国が関係してくる。それを福島県の漁業者に委ね、任せる国もずるい・・・完全に安全になるまで福島県の船は海に出るな」。

原子力規制委員会の長は、「地元の理解を得た上で」ALPSで処理した後の水は海洋放出することが必要だと強調したと報道されている。廃棄物等の海洋投棄について定めた条約がある。しかし条文には「陸上からの自国領海への投棄を禁ずる」ということは書かれていないとの事。その理由は二つあると思う。①そんな馬鹿なことをする国がある筈はないという事が条約の前提にある。②冷戦時期、核兵器保有国が放射性汚染水などを自国領海内に投棄した前歴がある。

海は広いな大きいな!で、海洋投棄しかないことは既に決められているのだろうか? (渡部研自)

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